「学校つぶせ」部活クラスターに誹謗中傷の嵐!「自粛警察」はこんなにヤバい

 8月24日までに、生徒と教員、関係者を含めて100人を上回る新型コロナウイルス感染者が確認された島根県松江市の私立立正大淞南高校。そんな同校の生徒たちに対し、今、ネット上などで《日本から出て行け!》《学校つぶせ……》といった誹謗中傷が相次いでいるという。

 地元紙の記者が言う。

「記者会見で学校側は、クラスターが発生したサッカー部員の大半が寮で共同生活していたことが集団感染の原因ではあるが、生徒に落ち度はなく、あくまでも学校側の不十分な対策が問題だったと強調して謝罪しました。ところが、同校がアップしている生徒の活動を紹介する公式ブログに、野球部が県大会で準優勝した際、サッカー部員らが祝福する写真が掲載され、たまたま、そこにマスクなしの生徒が写り込んでいたんです。すると、いわゆる『マスク警察』という輩が敏感に反応。ネット上では《マスクも着けずにコロナをばらまいているとは何事か!》といった批判が殺到。慌てた同校は写真を削除したものの、時すでに遅し。それがあっという間に拡散し『自粛警察』らによる誹謗中傷がエスカレートしてしまったというわけなんです」

 そこで、島根県は8月21日、写真が転載された十数件のサイトについて「人権侵害の恐れがある」として法務局に通報。削除要請を依頼するという異例の事態に発展した。

 一連の報道を受け、SNS上ではこういった誹謗中傷に対して《人間の醜い面がモロに露呈しているな。落ち度がないわけではないが、ここまでくると単なるクレーマー。悪いのはウイルスであるにも関わらず人間のせいにしなければ気が済まないのだろう。生徒の写真まで拡散させるのはやりすぎ。法的措置を検討したほうが良い》《「十分ではなかった」。では、どうすれば十分なのでしょうか。世間は、どうすれば納得するのでしょうか。屋外スポーツでは、適宜マスクを外して良いことになっているはずです。一部の人の反応とはいえ、関係者は傷つき疲弊します》といった意見が多くみられた。

 しかし、なかには、《悲しいけど、これが実態。ヤフコメ見ていても、似たようなコメントいっぱいある》《自粛警察にマスク警察、帰省警察……このままコロナが収まらなければ、この手の輩がもっと増えるんだろうなぁ。ますます家から出られなくなる》といった、やりきれない声も少なくなかった。

 社会心理に詳しいジャーナリストが語る。

「緊急事態宣言期間中に営業をしていた飲食店に『自粛要請ビラ』を貼り付ける。また、マスクを着用していない人を見つけると、着用を促すよう横柄に振る舞う。さらにはお盆で帰省していた人たちに対しては『このコロナが流行している最中に帰省するとは何事か!』と訴える……、今回の生徒たちによる誹謗中傷と、こういった言動との根っこにある心理はおそらく同じもので、『俺たちは頑なに決まりを守っているのに』という思いが強い彼らは、暗黙の了解を破られたと感じると、その対象が許せなくなる。で、『なんであいつはマスクをしていないんだ』『なぜあいつは自粛せずに旅行に行ってるんだ』と、鬱屈した感情を外に向けることで『自粛警察』となって現れるんです。しかも、個人主義という意識が強い欧米に比べ、村社会として発展してきた日本には、”右へならえ”という意識が強い。そのため、村八分状態になりやすく、差別や偏見、誹謗中傷などが起こりやすい。そう考えると、コロナ禍が長引けば長引くほど、自粛警察はエスカレートしていくでしょうね」

 人を疑心暗鬼にさせ、お互いがお互いを傷つけあう。コロナ禍は人間の醜い一面をも浮き彫りにしたようだ。

(灯倫太郎)

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