踏んだら即死!? 夏のビーチに潜む“殺人魚”の正体「ハブの30倍の猛毒が…」

 これも7月22日に見切り発車したGoTo キャンペーンの影響か、リゾート地・沖縄での新型コロナウイルス感染者数に歯止めがかからない。この事態を受けて県では、独自の「緊急事態宣言」を発令、8月1日から本島全域での不要不急の外出自粛などを求めることになった。

 と、そんななか、沖縄タイムスが7月30日配信の記事で「ハブの30倍猛毒 踏んで死亡も『オコゼに気を付けて』沖縄のビーチで捕獲」とのタイトルで「オニダルマオコゼ」という魚を写真入りで紹介。

 記事は、県内に住む男性が、近くのビーチで捕獲したこの魚を子どもたちに見せ、「今年は6匹捕まえた。普段泳ぐときは、海の中も確認して遊ぶようにして」と、その魚が持つ猛毒への注意を促したという、地元紙ならではのローカルなネタ。

 だが、この魚には、背びれに猛毒があり、その威力はなんと「ハブの30倍」という驚愕の事実に、SNS上では

《元々が自身の身を守るための毒とは言え、そんなに強烈にしなくても……》《ハブの30倍の毒なら、病院に行く前に亡くなってしまう方々が続出してしまいますよね》《なるほど、無知って1番死に近い事だと知りました》などなど、驚きのコメントが飛び交った。

 沖縄のタウン誌編集者はこう語る。

「記事では、地元の男性が”今年は6匹捕えた”とこともなげに話していますが、実は沖縄では毎年夏になると、オコゼなどに刺され、病院に救急搬送されるケースが急増します。なかでもオニダルマオコゼは別格で、ダイビング中にコイツに刺された場合、水中で心肺停止や意識を失う危険があり、そうなったら溺死してしまうこともある。さらに、この魚は、全身がボコボコとしたコブ状の体表をしていて、岩礁や砂などに擬態しているため、浅瀬でうっかり踏んでしまい、死亡したというケースもあります。なので、地元では決して侮ってはならない危険な“殺人魚”“地雷魚”として知られているんです」

 つまり、皮肉にも、エメラルドビーチが広がる沖縄では、あちこちにそんな危険生物が生息しているというわけだ。しかし、前出の編集者によれば、その一方で、食べると非常に美味で、地元では高級魚として人気が高いのだという。

「オニダルマオコゼは浮き袋をもっていないので、他の魚のように海中をふわふわと泳ぐことが出来ません。そのため、基本、海底にじっと潜んで小魚や甲殻類などが近くにくるのを待ち、獲物が来るとそれをパクッと捕食するのがパターン。なので、滅多に網にかかることはありませんし、漁獲量も少ない。釣りでも外道としてかかる程度だから、流通量が当然限られることもあって、沖縄では珍味としても重宝されているんです」

 調理法は、みそ汁(魚汁、鍋)、煮つけ、唐揚げ、天ぷら(フリッター)と、何でもありだが、特に沖縄風のみそ仕立ての汁は、白身のプリプリな食感がクセになる美味しさとのこと。

 ま、きれいな花には毒がある、というのは世の常だが、「オニ」「ダルマ」「オコゼ」という、ネガティブ感満載の名前をつけられた、この醜い魚が、美味でさらに高級魚として人気があるとは驚くばかりだ。

「ただ、沖縄にはコイツだけじゃなく、ウンバチイソギンチャクやハブクラゲ、ヒョウモンダコなど、刺されたらヤバい生物がうじゃうじゃいますからね。最近、地元の若者が海に入らなくなった背景にはそんな危険生物の存在があるのかもしれません」(前出・編集者)

 緊急事態宣言の発令で、県外からの渡航自粛を呼び掛けている沖縄県(8月3日時点)。近い将来、コロナ禍が終息して、思う存分、沖縄のビーチで遊ぶ機会ができたとしても、この危険生物の存在を頭の片隅に入れておいてほしい。

(灯倫太郎)

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