高速道路などを走行中、オービスを発見して慌ててブレーキを踏み減速したという経験はないだろうか。オービスとは高速道路などに設置された速度違反自動取締装置で、ラテン語で「眼」を意味する。
ところが、近年、日本各地でこの固定式オービスの撤去が急ピッチで進められているという。交通ジャーナリストが解説する。
「最盛期だった2002年には、全国701カ所以上に固定式オービスが設置されていましたが、現在その数は430機余り。今年に入ってからも撤去作業が続いています。理由は機器自体が老朽化してきていることが一点。さらには、位置が固定されているため、カーナビやGPSを搭載したレーダー探知機、あるいは交通取り締まり系のアプリなどを車に搭載していれば、ドライバーが設置位置を容易く知ることが出来る。そんなこともあって、同機での速度違反検挙数が3%程度にまで落ち込んでしまったんですね。つまり、固定オービスは、もはや『戦力外』と言っても過言ではない存在なんです」
代わりに台頭してきた「移動式オービスは」、コストが固定式の3分の1以下と言われ、当初一般道路だけで使用されていたが、最近では高速道路にも出現。抜き打ち的な取り締まりには最適と、今後はさらに“活躍”の場を広げていくことは間違いないだろう。
さて、そんな絶滅危惧種ともいえる固定式オービスだが、唯一、依然として力を発揮しているエリアがあるという。
「ズバリ、それが大阪です。警察庁交通局が発表している『固定式速度違反自動取締装置等による取締り件数』よれば、昨年度のオービスによる取り締まり件数は全国で4万2454件。ところが、その30%以上を占めるのが大阪なんです。たとえば、同年度の東京と北海道、大阪を比較した場合、東京(警視庁)は《51台(設置数)/3432件》に対し、北海道は《47台/5157件》。ところが、大阪は東京より少ない《45台》にもかかわらず、なんと1万3857件という、驚異的な検挙件数を誇っているんですね。府民に言わせると、大阪は他府県に比べ、設定速度をかなり低くしているため、他県では引っかからなくても、大阪に入った途端に引っかかるのでは……、とも言われますが、正直、真相は不明です。ただ、戦力外を通告され、撤去されつつある固定式オービスが、大阪においていまだ活躍しているというのは、まぎれもない事実だということです」(前出・ジャーナリスト)
まさに、捨てる神あれば、拾う神あり……。とはいえドライブレコーダーによる動画記録が当たり前になったこのご時世において、定点撮影された静止画で交通違反を取り締まるという行為には、やはり違和感を覚えざるを得ない。
(灯倫太郎)