安倍政権が企む“国民全行動”追跡システムの恐怖「位置情報も通話も筒抜け」

 菅義偉官房長官(71)は6月23日、マイナンバーカード(個人番号カード)と運転免許証を一体化する検討を始めると発表した。将来的には携帯電話番号との紐づけなども検討しているというが、実はこれが「国民全行動把握」につながる制度と恐れられているのだ。

「これはヤバイ。政府による国民監視の始まりだ」

 こう声を上げたのは、監視業務に通じる警察関係者だった。

「我々は捜査において運転免許証をフルに活用しているので、その効力はよく承知しています。マイナンバーカードには写真や住所、生年月日などが記載されており、まるで運転免許証のような体裁です。とはいえ、持っている人が少ないので運転免許証のように利用するわけにはいかない。でも一体化させれば、その壁がなくなってしまう……」

 そう言って、運転免許証の活用方法について説明し始めた。

 それによると、事件捜査にあたって、まず作成するのが「事件チャート」と呼ばれる基礎資料(関係者を網羅し、相互の関係や個人情報などを整理して図表化したもの)。これに不可欠なのが顔写真だ。ほとんどの場合、運転免許センターの記録から転用し、本人確認のためにはもちろん、聞き込みなどの際にも利用しているという。

 顔写真のデータを、全国の監視カメラに照会をかけることもある。行方を追跡する目的のほか、事件前後の足取り確認や接触者などを特定するためだ。それにより得られた情報は、事情聴取などにフル活用され、自白への有効手段としての役目も果たしている。警察関係者が、踏み込んで明かす。

「ポイントは監視カメラへの照会ですね。駅や空港はもちろん、幹線道路やホテル、繁華街や市街地などにも多くのカメラが設置されており、顔写真をそれらの記録と照らし合わせれば、対象者の行動をほぼつかむことができる。おおよその立ち寄り先を把握したうえで、さらに周辺のカメラを確認するなり聞き込みをするなりすれば、いつ誰と会って何をしていたかくらいはすぐにわかります」

 こうなると、プライバシーも何もない。他人に見られたくないことも明らかにされてしまう。例えば、こんなことも……。

 居酒屋に行った、女性と密会していた、クラブに行った、性産業のピンク店で遊んだ、プロの女性を呼んだ、不貞相手と温泉旅行に行った。あるいは違法カジノに行った、利害関係者から接待を受け金銭をもらった、など日常行動の全ての現場を押さえられたりもする。

「これに携帯電話番号が加われば、もう無敵。位置情報はもちろんのこと、通話やメールの相手、さらにメールについてはその内容まで把握できる。こうなると、まさに丸裸。実際に捜査で使っているので、よくわかります」(警察関係者)

 安倍政権はマイナンバーカードと運転免許証の合体で「行政のデジタル化」のメリットをうたいながら、その狙いは「全国民の顔写真入手」にあるのではないか。やろうと思えば、国民の全行動と生活の恣意的な監視、追跡をいとも簡単にできてしまうのだ。

 想像するだに薄気味悪い計画だが、実は政界にも危惧の声が広がっている。明かすのは、政府関係者だ。

「ことあるごとに政権にたてつく政治家や役人、メディア関係者らの弱みを見つけたがっている内閣情報調査室などは、すぐにでも手を出しかねない。現在は監視カメラ情報、携帯電話にかかわる情報などは捜査当局を介して入手しているが、マイナンバーカードが免許証と一体化すれば、調査官に付与された調査権の運用のあり方をこっそり変えるなどして、みずから直接、行うようになるだろう」

 この関係者は、かねて民主党に肩入れしていたうえに加計学園問題を告発し、安倍晋三総理(65)にたてついた前川喜平元文部科学事務次官や、菅官房長官に記者会見でかみついた東京新聞の望月衣塑子記者の事例を挙げ、以下のように警告した。

「内閣情報調査室は官邸の意を受け、各人の尾行・監視を行い、あら探しをした。その結果の一つが、前川氏の『出会い系バー』通い。この情報を読売新聞に流すなどの工作も行った。望月記者の場合は公表されなかったものの、親密な関係にある人物との交際ぶりなどが水面下で流され、それが巡り巡って同室の陰謀を描いた映画『新聞記者』(19年公開)に行きついた。こうしたことがますます増えるのではないかと懸念される」

 さる自民党議員も、こう心配顔で語った。

「政敵に対する格好の兵器になるだろう。国会議員の顔はすでにさらされているが、秘書や有力支援者などの顔写真はなかなか手に入らない。それが容易になる。携帯電話番号も同様だ。SNS(ネット上の交流サイト)などで政権に批判的な言動をしている者、特に影響力のある人物については安倍総理がやたらと気にしているため、そのアラを探すことにも使われかねない。政府に都合の悪い人間は全て監視対象となり、丸裸にされる。国民はつゆほども思っていないかもしれないが、今、日本はひそかに中国のようになりつつある……」

 さまざまな疑惑や犯罪的行為の追及には言い逃れを続け、一方で、みずからの権力維持のためには手段を選ばず、邪魔者は排除する。安倍政権の本性見たり、である。

 現在、政府はマイナンバーカードの普及を図るべく、大手企業を巻き込み、莫大なカネを投入しつつある。今年9月に開始される「マイナポイント事業」(マイナンバーカードを利用したポイント制度。政府がポイントを決済するキャッシュレス業者に補助金を給付する)のことだ。

「これはもらっておかないと」とこぞってマイナンバーカードを申請すれば、実はその向こうに空恐ろしい監視社会が待ち受けることになる。

「幸いなのは、新型コロナウイルスの流行のせいで、大半の人がマスクを着けるようになったこと。これで監視カメラによる人物特定が難しくなる。ひょっとすると世の中、うまく帳尻が合うようにできているのかもしれない」(警察関係者)

 はからずも、コロナ禍によって「防衛手段」を得ることになった形だが、国民は安倍政権の暗部にも目を向けておく必要があるのだ。

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