罰則付きの外出制限令も!? 新型コロナ「第2波」で「首都移転」の現実味

 ようやく休業要請の全面解除となり経済再開に向けて動き出す中、新型コロナの「第2波」に備え安倍政権が突如、「罰則法制化」を企てていた。そのターゲットは感染者数が増加傾向を示す東京だ。実行されれば首都機能はマヒし、都民は孤立状態に。その裏では緊急の「首都移転」が秒読み段階に入ろうとしていた。

「日本ならではのやり方で、わずか1カ月半で今回の流行をほぼ終息させることができた」

 5月25日、記者会見の冒頭で安倍晋三総理(65)は国民に向けてこう強調し、胸を張った。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言を解除して以来、東京は約1カ月をかけて段階的な解除に踏み切った。「ステップ1」では、各業種の営業が次々と可能になり、6月19日には休業要請を全面解除。だが、1日あたりの感染者数が0人の自治体が増えていく中、東京だけは依然として危険信号がともっている。

 6月1日から2桁(20日現在)の感染者が続き、特に14日、15日、18日は40人を超え、全国でも突出した数字を残している。6月20日でも39人という数字は「1日の新規感染者数が20人未満」という「東京アラート」の指標をはるかに上回る結果となっているのだ。

 誇らしげに緊急事態宣言を解除した安倍総理だったが、思わぬ急増に焦りの色を隠せなかったのか、15日の参院決算委員会で新型コロナ感染拡大の防止策に触れると、

「罰則付きの外出制限について『どうしても必要な事態になれば当然検討されるべきものだ』と述べたのです。新型コロナの『第2波』が警戒されているとはいえ、今回の発言は唐突な印象を拭えません」(政治部記者)

 海外では強制的な外出制限が認められている国もあるが、日本の現行法は知事が外出自粛を要請できても、罰則は認められていない。それを今度は一転、守らなければ罰を与える、と言い始めたのだ。

 そしてこの先、感染者数の現状を見れば、罰則規定が認められ、まず対象となるのは明らかに東京だろう。

 安倍総理の「コロナ罰則法制化」について、経済評論家の佐藤治彦氏は問題点をこう指摘する。

「ようやく経済再生に向けて動き出したのに、水を差すようなもの。外出制限をしても医療従事者や官公庁の役人、介護の仕事をしている方など、社会的にどうしても外出しなければならない人は出てきます。その他にも病気になって病院に行ったり、スーパーマーケットに買い物に行くこともある。外出するためには役所に書類を申請し、承認を得なければならないとすれば、役所はいっぺんに100万人単位の書類の作業に追われ、大混乱になるだけですよ」

 他県への移動も制限され、東京が「鎖国状態」に陥って孤立するのは必至。実体経済がますます悪化の一途をたどることになる‥‥。

「世田谷区の人気エリアを見ても、お店の家賃は一坪あたりで3万円。コンビニの広さでだいたい30坪と言われ、飲食店やアパレルなどは毎月100万円単位の家賃を自粛期間中も払わなければなりません。国が補助してくれるのも一部だけ。次に自粛要請が出れば体力がもたずに閉める店が続出し、来年の東京五輪前に不動産は『歯抜け』状態になってしまう」(佐藤氏)

 迫り来る深刻な第2波の襲来に備え、安倍政権ではもっと深刻な荒療治が構想されていた。なんと水面下で「首都機能移転」という緊急プランが浮上していたのだ。

 一極集中が進み、首都直下地震が懸念される東京で、首都機能移転の議論が起きたのは90年代のこと。誘致合戦が繰り広げられ、99年には「栃木・福島地域」「岐阜・愛知地域」に加え、「三重・畿央地域」を準候補地として選定した。しかし、国の財政が悪化し、移転費用が確保できずに議論は急速にしぼんでしまう。

 それが新型コロナの影響で未曽有の危機に陥り、首都機能移転の議論が再燃しているというのだ。

「候補地として名乗りを上げているのは、感染者ゼロで注目されている岩手県。達増拓也知事(56)が誘致に積極的で、都心の3密解消にもつながる、とアピールしています」(政治部デスク)

 現時点ですぐに首都機能を移転させるとは、ピンとこないだろうが、先を見据えて自民党議員も「東京離れ」を目指し、動き出している。

「新型コロナで危機感を持った議員約20名が中心になって、3月に勉強会を立ち上げました。今後は政府に移転費用の再試算を求めていくことになりそうです。もともと安倍政権は『地方創生』を掲げ、文化庁を京都に移転させることを決定。その後はパタリと止まっていますが、コロナ禍を機に、省庁の地方移転の議論が活発化しそうです。実際、3月6日には小池知事の定例会見でも首都移転の質問が出されるほど。小池百合子知事(67)は東京都のスタンスを代弁して、否定的な意見に終始しました」(政治部デスク)

 だが、肝心の東京都のコロナ対策は、7月5日の東京都知事選投開票を控え、機能不全に陥っている。感染拡大の兆候があれば警戒を呼びかける「東京アラート」を6月11日に解除すると、その後も数値的な目安と定めた新規感染者20人以上でも、再びレインボーブリッジが赤くライトアップされることはなかった。

 元国会議員の政策秘書で作家の朝倉秀雄氏は、あきれた口調でこう話す。

「この先、『東京アラート』は原則として発動しないことを決め、何の意味もなかったことを認めたようなもの。解除した翌日に都知事選出馬を表明したタイミングを見ても、都民ファーストではなく、都知事選に向けたパフォーマンスを見せたかっただけです」
 デタラメなのは東京アラートだけではなかった。都が定めた「7つの指標」やロードマップも見直すため、新たにワーキングチームを立ち上げたというのだから、開いた口がふさがらない。

「それでも都知事選は圧勝するはず。9年前に東日本大震災直後の都知事選で石原慎太郎氏(87)が災害に立ち向かう姿をアピールして4選しましたが、小池知事もコロナ禍で積極的にメディア露出を増加させています。都民は4年前に掲げた公約をほとんど達成できていなくても分析することはしないし、知名度を優先することがわかっている」(朝倉氏)

 したたかな戦略で再選を狙う小池氏。その陰に隠れて、コロナウイルスの第2波は、いつ爆発してもおかしくない状況が続いている。東京都のロックダウンも日本政府は視野に入れているのだ。

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