「10万円給付金」支払われたのは3%弱、政府「スーパーシティ構想」の愚

 東京新聞の調べによれば、5月末時点で関東の主要34市区で10万円の「特別定額給付金」が支払われたのはわずか2.7%、全国では6月9日段階で28%(総務省発表)と徐々に給付は進んではいるが、なんとも遅いの一言に尽きる。マイナンバーカードを利用したオンライン申請に至っては、結局は自治体職員が手作業で確認している本末転倒ぶりで、行政のIT化政策の不備がそのまま露呈された。

 ところが一方、5月27日には「スーパーシティ」を整備するための「改正国家戦略特区法」が参院本会議で可決された。同法案は、昨年は可決に至らず先送りされていたもので、コロナ禍が可決を決定的に後押しした形だ。

 というのもスーパーシティとは、住民や企業のデータを活用して、車の自動運転やドローンを使った物流配送、遠隔医療、MaaSと呼ばれる電車・バス・タクシーなどの異なった移動手段の垣根を超えた決済の1本化技術など、あらゆるIT・IoT技術が整備された街のことを言う。コロナは人と人、あるいは物を媒介した「接触」によって成り立つ社会を崩壊させ、テクノロジーを駆使した「非接触型」の社会を構築する必要を迫ったが、このスーパーシティ構想がそれを実現化するものだからだ。

「この技術化された社会はテクノロジーの進化の成果としてコロナ以前から構想されており、例えばトヨタが既に今年の年頭からおひざ元の愛知県内で実験都市の構築に向けて動き出しています。世界でも、ニューヨークは2012年にできたオープンデータ法で市民によるデータ活用が進められている先進都市で、中国ではアリババを担当とした計画を杭州で大規模に進めています」(経済ジャーナリスト)

 と、この分野でも日本は遅れてようやく途に就いたわけだが、10万円給付金を巡るあらゆる混乱は少なくとも現時点では、スーパーシティ構想は画餅であることを証明した。その原因は様々あるが、1つの大きな要因として、全国の自治体では1700ものシステムがバラバラなままで揃っていないことがあげられる。

「異なったシステムが併存していることで思いつくのはみずほ銀行のシステム問題ですが、3行が合併して以後、20年間もそのことで混乱が続きました。各自治体では独自にシステム開発が行われていることでその開発費に財源が割かれ、行政サービスの質を低下させている現実があります」(前出・経済ジャーナリスト)

 隗より始めよというが、安倍政権には、まずは給付金がきちんと行き届くようなコロナ政策をきちんと遂行して欲しいものだ。

(猫間滋)

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