「テラハ」打ち切りへ「38人が命を絶った」リアリティー番組のヤバい実態

「海外では『リアリティーTV』という呼称が一般的ですが、これまで多くの出演者が自死を遂げていることはあまり知られていません。ある海外メディアは過去に38人の出演者がみずから死を選んだと報じ、アメリカだけでも過去10年で21人が命を絶ったというデータもあります」

 こう言って、リアリティー番組に警鐘を鳴らすのは、国際社会病理学者で桐蔭横浜大学法学部教授の阿部憲仁氏。動画配信大手Netflixやフジテレビで放送されている恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に出演中だった木村花さん(享年22)が亡くなったニュースは、日本中に衝撃をもたらした。死因は不明だが、ネット上の「誹謗中傷」に悩まされた末の自死と見られている。同番組については、フジテレビと制作会社、Netflixの3社で協議を行うとの報道があったが、もはや打ち切りは避けられない状況だ。

「日本とは少し事情が異なるかもしれませんが、アメリカにおいて、『リアリティーTV』への出演というのは、人一倍強い自己愛(ナルシシズム)を持ちながらも夢を叶えられず満たされない平凡な日常を送る者たちにとって、勝者に生まれ変わるラストチャンスであり、そのため、視聴率至上主義の制作現場では、過剰ともいえる演出が横行していたのも事実。いわゆる“いい画”を撮るためなら手段を選ばず、事前のアンケートで嫌いなものを聞き、『虫が嫌い』という出演者に虫を食べさせたり、高所恐怖症の人間にバンジージャンプを強要したりといったパワハラまがいの撮影が行われていたようです。それでも、注目を集めているうちは、まだ自尊心を満たすことができるかもしれませんが、問題はその後。降板という形で番組から切り捨てられた後、何十年も元の平凡な生活を生き続けなければならない事に耐えられなくなって死を選択する、そんなケースも見受けられます」(阿部氏、以下同)

 前出の木村さんが所属していたプロレス団体「スターダム」の関係者はスポーツ紙の取材に対して「表向きは突っ張って見えるけど、性格が繊細だからそう見せていたところがあったと思う」と語っていた。「テラスハウス」では、本来の自分ではないキャラクターを演じていた可能性も指摘されている。

「特にアメリカの『リアリティーTV』は、制作サイドが『とにかく目立ちたい』という出演者の心理につけこみ、特殊なキャラクターを押しつけることは珍しくありません。例えば、『酒乱』『性悪』『男好き』『ウソつき』といった現実とは違ったキャラを演じなければならなくなる。結果的に、彼らは番組を卒業した後も、10年、20年とそのレッテルがまとわりつくこととなり、何十年も経った後でも知らない人間からいやな奴と決めつけられて扱われたり、特に今日では毎日毎日100件を超える“cyberbullying(ネットいじめ)”の被害にもさらされます。また、出演期間中に精神に変調をきたすケースも多く、精神安定剤を服用して収録に臨んでいたことを明かす出演者もいました。通常、出演希望者には収録に耐えられるかどうかを確認する数回にわたる面接や1200項目に及ぶアンケートで精神状態をチェックし、収録には精神科医が帯同するなど、“表向き”には一見メンタルケアにも取り組んでいますが、実際の収録はそうした事は一切お構いなしで過激な注文を押しつけ、逆に出演者を貶める事で視聴率を稼ごうとする風潮が蔓延しているようです。世界的に『リアリティーTV』のあり方が問われる時期にきていると思います」

 おもに90年代から世界各地でオンエアされている「リアリティー番組」だが、視聴者の誤解を招くような演出や編集が加えられるなら、「リアリティー」の看板ははずしたほうが賢明なのかもしれない。

(編集部)

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