いまだシーズン開幕の目途もたたず、全体練習すらままならない。個人練習で悶々とした日々を過ごす選手たち。NPBは開幕をあきらめていない様子だが、仮に無観客試合を条件とする途中開幕となった場合でも、問題は山積している。
「ぶっちゃけて言えば、野手は開幕時点で3割程度の体の状態でもいい。仕上がっていなくても、打って投げることはできるし、何試合かかけて調子を上げていける。でも投手は肩が80%は仕上がっていないと、試合では投げられません。ちゃんと投げ込んで球数をこなしてからでないと。現状、ブルペンで投げることもできないし、このままではキャンプ前の状態に戻ってしまう」(球界OB)
試合ができたとしても、ベンチでの「濃厚接触」はどうするのか。球界OBが続ける。
「ベンチは密集地帯で、大声も出す。でも今のところ、そんなことはまったく議論されていません。試合に出るレギュラー陣が間隔を空けて座り、残りの選手はベンチ裏にある素振りルームにイスを置いて、モニターで試合を見るしかない。あるいは、試合前のミーティングはどうするのかという問題もあります」
選手たちが使用する共用の道具にも、感染の脅威は潜んでいる。スポーツライターは渋い表情で、
「ボールやバット、ヘルメットなどです。選手同士で貸し借りもするし、かといって不特定多数が手に触れる道具であっても、いちいち試合を止めて消毒するわけにはいきませんからね」
近年、国際試合における「侍JAPAN」の活動の影響で、ライバル同士であるはずの各球団選手が仲よし集団になって乱闘がめっきり減ったとされる。だが外国人選手はさにあらず。死球で激怒し、投手に向かって突進してきた場合、どうするのか。
「ベンチから選手たちが飛び出しそうになったら止めるしかないでしょう。グラウンドに何十人も集まれば、濃厚接触になる。乱闘自粛令が出ますよ(笑)」(スポーツ紙デスク)
さて、「最長で9月開幕」を掲げる姿勢のメジャーリーグでは、こんな珍案も飛び出していた。
「キャンプ地のフロリダとアリゾナに全30球団を分けて集め、無観客試合をするプランです。球場もたくさんあり、移動による感染リスクも回避できる。なにより放映権料も見込めるから、球団オーナーたちも案外、乗り気らしいですね」(球界関係者)
コロナ対策としては、
「審判をなくして、飛沫が出ない『AI球審』がストライク、ボールを判定する。塁審はカメラ映像を別室で見て判定するそうです」(前出・球界関係者)
なるほど、そんな手もあるか。翻って、日本の現状はというと、
「NPBと選手会は何も話し合っていないし、何も決められない。期待しちゃいかんよ」(球界OB)
コロナとともに、選手とファンの我慢くらべは続く。