いずれにせよ、症状の差こそあれ、デスクワークや肉体労働など職業や趣味を問わず、潜在的な五十肘予備軍は数知れず。ましてや「人生100年時代」を迎えつつある現代の日本人にとっては、五十肘は高齢者にとっても気をつけるべき症状と言える。
「肘の痛みを簡便にチェックする方法があります。手の甲を上にして腕を前に出し、もう片方の手で中指を押さえながら手首を使って上方向に力を入れる。この時に肘の外側に痛みがあれば五十肘の予備軍と言えるでしょう」(於曽能医師)
一方、肘の異変を感じる前に、予防も不可欠。こわばりがちな肘の伸筋に対し、ストレッチやトレーニングをすることが有効だ。於曽能医師が言うには、
「腕を前に伸ばして手首を上下に曲げて伸筋を伸ばします。少しずつ動かすようにして、慣れてきたらペットボトルを持つなど負荷をかけて鍛えていくのもいいでしょう」
日常生活に支障を来すほど痛みがある場合は、冒頭に登場した佐伯さんのように、まず肘を休ませることが大事だという。仕事などでどうしても肘を使い続ける場合は、サポーターやバンドを装着するという対処もあるが、それでは根治は難しい。五十肘を放っておけば炎症が悪化するのはもちろん、肘をカバーしながら生活することになるため体に無理が生じ、他の部位を痛めることも。
「無理な肘の使い方をしていれば五十肘がよくなることはありません。スマホの使い方、パソコン作業、仕事など日常生活で肘の動かし方を見直してみてください。ラクに動かせる方向に力をかけるように手や腕を使うこと、腕の内側にある屈筋を意識することが大切です。つらい痛みがある場合は、ご自身で考えていただくよりも、整形外科に相談していただくのがいいでしょう。炎症や痛みを抑える飲み薬や、湿布薬、電気治療などの治療法も、症状に応じてさまざまあります」
とかく放置しがちな肩や肘の痛み。長期化すると生活全般に支障を来すだけに、「早期発見、早期治療」を心がけたい。
<五十肘チェックリスト>
・毎晩、寝ながらスマホを見ている
・パソコン操作にいまだに慣れていない
・キーボードを強く叩く癖がある
・キャリーバッグで移動する際に腕をひねって持つことが多い
・仕事柄、モノをつかんで持ち上げることが多い
・常に腕が力んでしまう
・ピッキング(倉庫などから商品を取り出す)の仕事をしている
・腕を使うスポーツを始めたばかりだ
※当てはまる項目があり、肘に痛みがある場合はすぐに医師の診察を受けてください。