大阪が「大阪・関西万博」前のカジノ開業を断念した“オトナの事情”

 当初の予定では今年1月にIR(カジノを含む統合型リゾート)の整備区域選定の基本方針が示され、来年1〜7月にはIRを誘致したい地方自治体からの申請を受けるという段取りだったカジノ設置だが、どうやら大幅なタイムスケジュールの後退を余儀なくされそうだ。

「まずは昨年末に政権与党である自民党でカジノの計画を推進する立場にあった秋元司衆議院議員が、中国系企業の『500ドットコム』から現金を受け取っていたとされる容疑で東京地検特捜部に逮捕された、いわゆる“カジノ疑獄”でミソがつきました。秋元議員は2月1日にもマカオのカジノでチップ代を『500ドットコム』に負担してもらった疑いで追起訴されていますが、このあたりから国政は新型コロナウイルスの対応でてんてこ舞いになり、3月以降にズレ込んでいた基本方針の提示も、それどころの話ではなくなっています」(カジノ事情に詳しいジャーナリスト)

 一方、候補地の方だが、3月27日に大阪府と市は、それまでこだわっていた2025年4〜11月開催予定の「大阪・関西万博」前の開業を断念すると発表した。理由はもちろん、新型コロナウイルスの拡大防止が最優先というものだが、実はそれだけではない。

「ずいぶんと前からIR誘致に積極的で、横浜市のように地元住民の反対が少ない大阪にIR設置の認可が下りるのはほぼ確実。ところが、大阪における与党の維新が『万博前開業』にこだわりすぎましたね。それを公約に選挙を戦ってしまったからです。万博が行われるのは狭い夢洲(ゆめしま)ですから、『部分開業』という中途半端な計画になってしまいました。実際、世界的にカジノを運営するカジノ・メジャーは嫌気がさして横浜市に比重を移してしまい、大阪のIR事業に入札したのはメジャーのMGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスによる共同事業体のみでした」(同前)

 そこへ来てのコロナ騒動で、「(MGMとの調整は)日本と米国で行き来ができない。万博前の開業は、そもそも厳しいスケジュールだった」と、松井一郎大阪市長も当初の見通しの甘さを認めているように、大阪でのカジノ設置に関しては、新型コロナウイルスの蔓延が、無理なスケジュール撤回の渡し船となった格好だ。

(猫間滋)

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