3月30日に志村けんさんの訃報が伝わったことにより、日本全体で危機感がひしひしと高まった新型コロナウイルス。感染者の激増による「医療崩壊」への懸念も高まるなか、慢性疾患を抱える人たちの間では「このご時世に病院に行っていいのか?」との疑問と恐れが広まっているという。医療系ライターが語る。
「ひとつには薬の処方箋を出してもらうだけの通院で、病院に負担をかけていいのかという懸念。そしてもうひとつは、多くの病院でクラスターが発生するなか、自分自身が新型コロナウイルスに感染するとの恐れです。とはいえ慢性疾患の薬をもらわないわけにはいかず、患者たちは頭を抱えています」
そういった慢性疾患患者の声は、新型コロナウイルスの騒動に隠れてほとんど伝わってこないのが実情だ。そしてそういった患者への対策について、厚生労働省がいち早く対応していたこともまた、ほとんど伝わっていないというのである。前出の医療系ライターが続ける。
「新型コロナウイルス対策では『対応が遅い』と批判されがちな厚労省ですが、2月28日には慢性疾患に対する医薬品の扱いについて、各自治体の担当部署に“事務連絡”が発出されました。その内容を大ざっぱにいうと、診察実績のある慢性病患者については、電話診療などの遠隔治療(テレメディシン)を行った上で、薬局に処方箋を送信することを認めるというもの。これにより通院することなく、患者側は治療薬を処方してもらえるわけです。また3月19日には、対面診療が必要だった《これまで処方されていない慢性疾患治療薬》の処方も電話診療で可能となりました。もちろん様々な条件が付いているのでどんな薬でも出してもらえるわけではありませんが、この厚労省通達から恩恵を受ける慢性疾患患者は少なくないはずです」
この通達については医療分野の業界紙などでは報じられているものの、一般メディアで取り上げているのは少ないのが実情。そもそも現場でもこの新システムを知らない医師がいたり、医局(大学病院)がまだ対応していないケースも若干あるようだ。
「70歳ながら元気ハツラツだった志村さんが亡くなったことにより、高齢者はますます外出への恐怖感を抱くように。それゆえ、病院に行かなくても薬をもらえることがもっと周知されてほしいものです。なお電話診療には予約が必要で、決められた時間に必ず電話が取れる状態にするなど、患者側の準備も必要。すべての病院で対応しているわけではないことや、病院に電話するだけで薬がもらえるわけではないことを、患者側も留意しておきたいところです」(前出・医療系ライター)
なおこの措置は、新型コロナウイルスの流行が収まった時には撤回される可能性もある。あくまで緊急避難的な措置であることを覚えておきたい。
(北野大知)