確定死刑囚・植松聖が「刺青画」に込めた怒りとは? 大学教授が徹底分析

 2016年7月26日未明に起きた大量殺人事件が最終局面を迎えている。

 相模原の障害者施設「やまゆり園」に押し入って入所者19名の命を奪い、職員ら26名に重軽傷を負わせた事件で死刑判決を受けた植松聖元被告(30)。3月31日、弁護人の控訴を取り下げたことで、死刑判決が確定した。

 公判では、弁護側が「心神喪失」の状態にあったと無罪を主張したのに対し、植松元被告が強く否定する場面もあった。

「植松はけっして狂人ではなく、犯行は確信的です。本人が認めているように確信犯としての行動であり、計画性もあります」

 こう話すのはこれまで数々の凶悪犯罪者を研究・分析してきた国際社会病理学者で桐蔭横浜大学法学部教授の阿部憲仁氏。これまで植松元被告と20数回にわたって手紙と面会でやり取りを続けてきた。

「本を差し入れすれば、『いつもありがとうございます』と礼を述べるなど、気遣いができる人物です。面会終了後には、いつも私の姿が見えなくなるまで、腰を直角に曲げた最敬礼の姿勢を崩しませんでした」

 そのやり取りの中で植松元被告が阿部教授にあてて絵画を送っていた。絵は数点あるが、中でも目を引くのは鯉や龍を描いた刺青画だ。

「思い通りにならない環境で育った人間というのは、しばしば自分が確実にコントロールできるものとして『美』に執着することがあります。ポイントは植松元被告が育った家庭環境。別の人物にあてた手紙に、『人前で涙を見せるなら舌を噛んで死ねと御指導を頂きました』と記していますが、家庭内で権威主義的な強いプレッシャーにさらされ続けていたのではないでしょうか。それに応えられないことで、自己嫌悪に陥り、膨大な怒りを抱えるまでにいたった。刺青はその表れのひとつではないかと推察します」

 阿部教授にあてた手紙の中でも植松元被告はこうつづっている。

〈「美」は人生最大の欲求で、「美」を求めることは正義と考えております〉

 死刑判決を受け入れることもまた、植松元被告にとっての“美学”だったのか。いずれにしても、命を断ち切られた犠牲者の無念、遺族たちの憤懣が晴れることはない。

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