年明け早々の1月2日夜、アメリカ国防総省がイラン革命防衛隊のカセム・ソレイマニ司令官を殺害したことを公表、以来、大がかりな報復戦はまぬがれたものの、アメリカとイランの間で軍事的緊張が一気に高まったのは周知の通り。
「イラン革命防衛隊は国軍とは別に、政治と宗教の最高位の最高指導者の直轄の組織です。ソレイマニはいくつかある下部組織のうちのコッズ部隊の司令官で、コッズ部隊は国外のさまざまな作戦を行うエリート部隊として中東におけるイランの影響力を高めていました。そんなイラン実質ナンバー2のソレイマニをアメリカ国務省は日本の山本五十六に例えています。連合艦隊司令長官として真珠湾攻撃の立案を指示したのが山本ですから、イラク国内の反米保守派からの支持が篤かったソレイマニがアメリカにとってどんな存在だったかがわかるでしょう」(全国紙記者)
そんな象徴的な人物の殺害だっただけにもちろん政治的に大きな意味を持つが、もう1つ重要なのは、これだけ重要な人物の殺害が今回ドローンで行われたということ。
「ソレイマニがシリアからバグダッド国際空港(イラク)に到着した時、イラクの当局者がいれば中止という作戦でした。殺害を検討し始めてから情報網、電子機器、偵察機などあらゆる方法で監視・追跡を行い、現地でイラク当局者がソレイマニの乗る車に同乗していなかったことからミサイル・ヘルファイヤR9X『ニンジャ』2発が発射されました。発射したのは、カタールの軍事基地から飛ばされた米特殊作戦軍の無人航空機・MQ−9リーパーで、アメリカのネバダ州の空軍基地から遠隔操作されたされたものです。リーパーはほぼ無音で飛んで1850キロの航続距離を誇り、『空の暗殺者』とも呼ばれるように主に攻撃用で設計されていますが偵察でも使われ、昨年10月にイスラム国の最高指導者・アル=バグダーディーを殺害した際にもヘリや戦闘機と一緒に投入されています」(同前)
アメリカはこのバグダーディーとアルカイダのウサマ・ビン・ラーディンの中東の要人を殺害してきたが、いずれも特殊部隊によるものだった。しかも、トランプ政権はイラン革命防衛隊を「外国テロ組織」に指定してはいたが、ソレイマニの殺害について実は本当の理由は明確にされていない。しかも無人作戦によって行ったということは、今後もアメリカ大統領の都合によっては無人戦争を仕掛けるという“舵を切った”と見ることもできなくはない。
(猫間滋)