文科省が「氷河期世代教員」積極採用に動く“今さら感”

 現在40~50代の就職氷河期世代への就労支援に積極的な姿勢を見せる石破茂首相。6月24日、文部科学省は氷河期世代の教員免許所有者を積極採用するように全国の教育委員会へ通達したが、これもその一環だ。

 同省の「公立学校教員採用選考試験の実施状況」によると、24年度の全国の教員採用試験の倍率は3.2倍。1998年~2001年度は10倍を超えていたが、以降は下落の一途を辿り、現場ではすでに教員不足が慢性化し始めている、

 それを補う目的もあるが、ネット上では《今さら積極採用とか言われても…》《せめてあと10年早くやってほしかった》など反応は決して良いものではない。

「塾講師などしている方はともかく、教職を志望しながら教員になれなかった大半の氷河期世代は、まったく関係のない仕事に就いています。大学を卒業してから20~30年が経ち、その間はスキルのアップデートも行っていない。一般的な転職の比にならないほど大変でしょうね」(教育専門誌記者)

 実際、教員は仕事量が多く、日教組が昨年公表した「学校現場の働き方改革に関する意識調査」によれば、教員の実質的な月の残業時間は88時間36分。これでも多少は改善されてきたものの、根本的な解決には程遠い。

 一応、公務員なので収入面の安定は大きな魅力でも体力面でも衰えが目立ち、そもそも民間企業とはあまりに環境が異なる。すでに人生の折り返し地点を過ぎた氷河期世代にとってはハードルがあまりに高い。

「また、彼らを受け入れる学校側にも支援体制が整っているとは言い難く、保護者からは教育の質の低下を懸念する声も出ています。教員の離職率、うつ病などによる休職率も民間企業より低いですが増加傾向しています。もし仕事や環境に馴染めず辞めてしまった場合、年齢的にキャリアの再構築は難しくリスクが高いと言わざるを得ません」(同)

 一歩間違えば政策自体が失敗になりかねない。氷河期世代の教員を採用するのであれば、それと並行して残業の解消など教員の労働環境の改善も急務だと思うが…。

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