今回から「アサ芸ハッピーマネー講座」と題して、老後をそこそこ楽しく暮らしていくために必要な「お金の話」を、数回にわたって取り上げようと思う。
まずは伺いたい。どのくらいのお金がありますか?
これまで多くの人の相談に乗ってきて不思議に思うのは、いくらお金があるのかを把握できてないこと。「それでは老後のお金のことを考えることができない」と言うと、預金通帳を持って来て「これだけあります」って言う人もいる。
ただ、老後にいくらのお金があるか? となると、すべてを把握するのは難しい。老後のお金といえば「年金」だが、すでにもらっている人もいれば、50代だからまだ先の話という人もいる。それに年金は、物価の変動や経済環境によって変動するからだ。
ただし、今のところいくらぐらいもらえるかは、役所から年に一度送られてくる年金定期便でわかる。まだ年金をもらい始めてない人は、まずは「65歳から20年間でどのくらいもらえるか」、すでにもらっている人は「85歳までにいくらもらえるか」を計算してもらいたい。
例えば夫婦で年間200万円くらいの年金が支給されるとする。となれば、65歳からの20年間で計4000万円が家庭に入ってくることがわかる。現在70歳の夫婦なら、85歳まで15年間あるから計3000万円というわけだ。
人生はいつまで続くかわからない。病気などの出費があったり、将来の物価情勢、何歳まで仕事をするのか、給料はいくらか、税金はいくら取られるのかなど、わからないことや変わっていくことばかり。それでも、ざっくり把握しておくことは大事である。
次に「貯蓄」や「株式」などのお金を調べること。可能であれば、利息や配当金が85歳までにいくらになるかを計算してみよう。
60歳未満の人で、まだ何年か働くつもりの人は、65歳までにどのくらいのお金を残せそうか、退職金がもらえる人は、おおよその金額も加えよう。そして住宅ローンなどがある人は、そのお金を差し引いて、いくら残りそうかを計算してほしい。
次に調べてもらいたいのが「保険」だ。現在50歳以上の人なら貯蓄型、つまり、保険会社に納めた金額より相当有利な保険料が戻ってくる生命保険に加入している人も少なくないだろう。
貯蓄型といっても年金型もあれば、死んだ時にもらえる保険もある。死亡時にもらえるのは「定期保険」と「終身保険」の2種類あるが、例えば75歳までに死んだ時にだけもらえる定期保険は掛け捨て、何歳になっても死んだらもらえる終身保険は、貯蓄型と分けることがある。
「保険のことはよくわからん」という人は、保険契約書に「解約返戻金」についての一覧表がついているはずなので見てもらいたい。これは「やっぱり死んだ時ではなく、生きているうちにお金が欲しい」と途中で保険を解約した際、いくら戻ってくるのか、その金額が書いてあるのだ。
例えば、死亡時は1000万円の保険金を支払うけれど、70歳で解約したら700万円、80歳なら800万円支払うといった具合。今すぐ解約したらいくらか、5年後、10年後ならどれぐらいのお金が戻ってくるかを把握しておけば、急にまとまったお金が必要になっても安心だろう。
このように、年金や貯蓄だけでなく、生命保険も自分の金融資産としてカウントしよう。
また「遺産相続」などで入ってきそうなお金があれば、それも考えること。
このように、まずは85歳までの年金や貯蓄に加えて株式、投資信託、生命保険などの金融資産、今後入ってくると思われる賃金のうち残せそうなお金や退職金、遺産相続‥‥。ざっくりとだが、自分の老後のお金の姿がだんだん見えてきたはずだ。
(以下次回)
佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。最新刊「新NISA 次に買うべき12銘柄といつ売るべきかを教えます!」(扶桑社)発売。