6月14日、鉄道ファンの「聖地」で、主に撮り鉄のための「マナー講座」が開かれた。プロカメラマンの指導のもと、線路や他の利用者に配慮した撮影ポジションを学んだ他、夜間展示の車両を自由に撮影できる特別体験も用意された。
この日、埼玉県さいたま市の「鉄道博物館」に集まったのは約250人の撮り鉄たち。何かとお騒がせな撮り鉄の行き過ぎた行動を改善しようという企画だった。
社会問題化している撮り鉄のマナー違反といえば、例えば、2024年11月7日、JR横浜駅の横須賀線ホームで起きた事例が顕著だ。旧カラー復刻のE217系電車を撮影しようと同駅のホームに集まった撮り鉄たちの一部が、黄色い点字ブロックの外側にはみ出して撮影を続行した。駅係員から「点字ブロック内へ下がってください!」と安全確保のアナウンスがあったにもかかわらず、これに従わないばかりか、「ボケーッ!」「バーカ!」と罵声を浴びせる騒ぎに。最終的に列車が(写真が撮りにくい)ハイビームのまま走行したため、撮り鉄の罵詈雑言がさらにヒートアップ。周囲は騒然とした空気に包まれた。
さらに同年11月23日には、JR信越本線沿線で「ELぐんま」のラストランを撮影しようする撮り鉄が線路際に密集。その結果、運行中の列車が緊急停止する事態となった。さらに、車掌からの注意喚起中にもカメラを構え続けるなどして車内外の混乱を招いた。この影響で、一部区間では運転見合わせも起きている。
地方路線でも無秩序な行為は後を絶たない。茨城県筑西市から栃木県茂木町を結ぶ真岡鐵道では、2024年11月末に企画したイベントが、撮り鉄の迷惑行為により中止に追い込まれた。駅前の公共道路を塞いで三脚を展開するなど、周辺住民や通行人への配慮を欠いた撮影が相次いだため、鉄道会社は「継続的にトラブルが発生すれば再実施は困難」と苦渋の決断を下したという。
「これらの事例を踏まえると、今回の鉄道博物館でのマナー講座は確かに有意義と言えるでしょう。しかし、そもそもこの講座に参加しようとする撮り鉄は、安全運行への配慮や譲り合いといった意識はすでに高いと見る向きもあるのです。むしろ、参加しなかった層、つまり、マナー意識が低く、トラブルを引き起こしている撮り鉄にこそ届く工夫が求められるのではないでしょうか」(鉄道ライター)
撮り鉄の行動は、正しく行えば地域経済や観光振興に寄与する側面もある。しかし、安全や公共の秩序が脅かされるようでは、本人には単なる趣味でも、それが「迷惑行為」として社会問題化してしまう。聖地で示された良識ある行動が、広くコミュニティに波及し、安全かつ快適な鉄道写真文化へと昇華されることが強く望まれる。
(ケン高田)
*写真はイメージ