【今回のお値段「プロ腹話術の人形」:木製のからくりタイプ1体10万〜15万円(ゴム製5万〜7万円)】
「人形」の中でも、今回は非常に特殊な、ほぼ一般人は買いそうもないモノを取り上げてみたい。寄席やお笑い番組に登場するプロ仕様の「腹話術の人形」だ。趣味でやっているアマチュアはけっこういるものの、プロの腹話術師は日本全国でも10人前後しかいない。
まず腹話術専門の人形師もいない。あくまで主にマリオネットなどを作っている職人が手がけたりするのだ。業界関係者によれば、
「昔、NHKとかで人形劇の番組やってましたね。その人形劇団で腕を磨いて、今でも現役で活躍してる方もいます。人形のからくりについては、文楽の先生に学んだりもしていて、『人形師』というより『人形作家』と呼ぶべきですね」
トップクラスとなれば数十万円以上の高額なものもあるとしても、通常、プロが使う木製の人形でも1体10万〜15万円くらいで手に入る。様々なタイプの人形の注文を受けて職人に発注する専門店があり、2〜3割が店側の取り分となるため、1体作って7万〜12万円は職人の手元に入る。
腹話術にとって大切なのは「カシラ」、つまり頭と顔の部分。仮に15万円のモノなら、ボディはせいぜい2万〜3万円で残りはカシラで12万〜13万円の割合だ。そこにどれだけ「からくり」を入れられるかでネタの幅が違ってくる。
基本的にレバー操作で口を動かしたり、瞼を開閉させたり。一度完成した人形に、眉毛を自由に動かすからくりを加えたら、改造費に2万〜3万かかった、なんて話もある。なかなか頑丈で、操作に使う糸を交換していけば、20〜30年はもつらしい。
目の動きにも工夫が必要だ。目を横に流して「流し目」を作ったり、下に落として「落胆」を作ったり。人形の喜怒哀楽がストレートに伝わるような、表情の豊かさが欠かせない。
一方、主に外国のプロには、ゴム製の口の中に手を入れて口パクするタイプの人形を遣う腹話術師もいる。価格も1体5万〜7万円くらいと少し安くなる。
「目が自在に動くような仕掛けはあまりなくても、ゴム製の方が人間の顔をよりリアルに表せるんです。だから、外国の人形の中にはホラー映画に出てくるような人間そのものみたいなのもある。日本人の感覚にはちょっと合わないですが」(前出・業界関係者)
もちろんプロでも、ネタによっては、1個2000〜3000円くらいのハンドパペット(指人形)を使ったりすることもある。
世の中のデジタル化が進行し、腹話術人形をロボット化させる流れがある一方で、人間がメイクをして人形になりきる「人間腹話術」も根強い人気を誇っている。奥が深い世界なのだ。
山中伊知郎(やまなか・いちろう)7月15日(火)に「ちょっと昭和なヤングたち昭和100年100回記念スペシャル」というライブを江戸川区・タワーホール船堀大ホールで開催。昭和の香り漂うお笑い芸人大集結で、腹話術師・ポンちゃん一座も出演する。