【今回のお値段「ロケ弁」:局内ケータリング1人前700~800円以内(総予算1回10万円以内)】
「ロケ弁」と聞くと、野外ロケでキャストやスタッフに配られるもの、というイメージが強いが、テレビ番組や映画のスタジオ撮影などで食べるものも、総称して「ロケ弁」と呼ばれる。
長く番組作りに関わってきたテレビ局プロデューサーによれば、
「小規模の番組でも1回で最低50人分、ゴールデンタイムのドラマあたりなら100人分以上は頼むわけですから、予算もバカにはなりません。ずっと続いている定石として言われてるのは、必要な分の一割増しで発注すること。100人いたら、110人分頼む。余る分にはいいんですが、足りないのはマズい」
余った分は、若いADやスタッフが2人分食べたり、家に持って帰ったりするので、だいたいキレイになくなったという。
また、実は歌番組などは、出演する歌手が自分の出番が終わるとすぐに帰ってしまうため、ロケ弁を準備しないケースも少なくない。それで、ある有名な歌番組の司会者は、よく別の番組の余ったロケ弁をもらって食べていたりすることも。出演者向けの弁当は、だいたいタレントクローク、つまり出演者控室の前に置かれているため、割と簡単に手にとれるのだ。
注文する弁当の単価も、時代による変動が激しい。バブル期には、1個2000円以上する焼肉弁当などを普通に発注していたものが、近年は、制作費削減もあって、どうにか1人分1000円以内に抑えようとする番組がほとんどだ。100人分そろえるとしたら10万円以内くらい。ところが、近年の物価高で、ロケ弁の定番中の定番とされるシウマイ弁当ですら1000円を超えてしまった。前出・プロデューサーによれば、
「それで増えたのが、ケータリング。業者にお願いして、スタジオの廊下にカレーとか唐揚げとかサラダとか、ご飯と一緒に持ってきてもらう。それをプラスチックの器に盛りつけてもらって食べるんですね。システムとしては旅館のバイキングに近いかな。自分の食べたい分だけ食べればいいし、単価にすると1人前800~900円くらいで済んだりします」
冬場ならラーメンをつけたり、夏場ならアイスをつけたり、とあくまで予算の範囲内でならメニューも臨機応変に変えられる。
ところが、最近はこのケータリングにも、さらなる予算圧縮の波が訪れているらしい。なんと、局内の社員食堂やレストランに注文を出すケースが増えているのだ。外部の業者と比べて輸送費がかからない上に、温かいまま食べられ、飲み物を加えても単価700~800円くらいに抑えられることになる。たとえ有名タレントでも、ロケ弁にそんなに高いクオリティーは求めないので、それでほとんど文句も出ないらしい。
近年、テレビ局は、どうにもセコい話が多い。
山中伊知郎(やまなか・いちろう)30代くらいの、まだ食欲旺盛だった時代には、テレビ局で仕事すると、しばしば余ったロケ弁を家に持って帰っていた。シウマイ弁当、のり弁、おさかな弁当、よく食ったな。