JR東海が「場所貸しビジネス」を始めるという。「JR東海ロケーションビジネス」というのがそれで、すでにウェブ上で募集を開始している。経済ジャーナリストが解説する。
「場所貸しとは、駅構内や、新幹線も含めた鉄道車両を、CMやドラマ、写真撮影のロケ場所として提供するというものです。ただ、対象は企業や法人に限られ、ユーチューバーやインフルエンサー、サークル、団体などは利用できません」
個人では利用不可ということもあり、なにやら鉄オタたちのため息が聞こえてきそうだが、では、なぜJR東海はこのサービスを始めたのか。実は、その遠因に、同社の株価低迷があると言われている。
5年単位で同社の株価の推移を見ると、極端な上げ下げを除けば、おおよそ3000~3500円の間を推移していた。それが、今年に入ってからは2700円台を付けるなど、主に3000円を切る動きで、1年単位で見れば、最も高かった4000円からきれいな右肩下がりで1000円以上も下げている状況だ。
「株価下落の理由の1つは、同社の収益構造でしょう。他のJR各社は鉄道だけでなく、事業を多角化していますが、同社は圧倒的に運輸事業の収益率が高く、他社のおよそ10%程度に対し、40%も占めています。もちろん、東海道新幹線あってのことなのですが、コロナ禍を経た現在では、投資家にとってこの収益構造はリスク要因にしか映らなくなっているのです。加えて、開業予定が2034年以降に延期となったリニア中央新幹線の問題も大きなリスクと見られているようです」(前出・ジャーナリスト)
裏目に出ることもあるが、「事業の多角化」は企業の生き残り戦術の1つではある。同社もようやく重い腰を上げたということか…。