慶應大病院関係者が続ける。
「安倍総理は中学生の時に潰瘍性大腸炎を発症しており、大腸全体が炎症を起こす重篤なケース。寛解という病状が落ち着く状態になれば普通の生活を送ることもできますが、炎症が30年以上も続くと、大腸の粘膜に腫瘍ができ始める。こうなると、全部の大腸を切除する手術をすることになります」
だが、総裁の任期も残り2年を切った今、大手術をするわけにもいかない。そのため、
「最後の切り札として、先進医療として国に申請中の『試験的治療』を検討中と聞いています。健康な他人の便を潰瘍性大腸炎の患者の腸に注入する『便移植』です」(慶應大病院関係者)
安倍総理の救世主は「便移植」。これは他人の便を薬剤に溶かし、濾過したものを患者の腸に注入することだという。
なぜ、他人の便の移植が難病治療に効果があるとされるのか。東京医科歯科大学名誉教授で「腸内革命」「アレルギーの9割は腸で治る!」などの著書がある藤田紘一郎氏の解説を聞こう。
「潰瘍性大腸炎の患者の腸では特定の腸内細菌だけが増殖し、健康な人の腸に比べて細菌の種類が少なく、種類も偏っています。長年治療を受けている人ほど腸内細菌が偏在し、腸内環境を悪化させる悪循環に陥っている。こうした大腸疾患には、腸内細菌の多様性こそが重要なのです。腸内細菌の種類が多ければ多いほど、人体に影響を及ぼす病原菌の増殖を防げます。より多くの種類の腸内細菌で構成された腸内フローラをまるごと移すには、健常者の便を移植することが効果的です。腸内細菌が産生している、他の腸内細菌を増やす因子やホルモン、アミノ酸も腸内環境を健常化するためには重要で、これらの産生物質や腸内細菌をまるごと移植できるのが便移植なのです」
そこで問題となるのは、誰の便を移植するかだ。
「便移植は欧米で流行中のクロストリジウム・ディフィシル腸炎(CD)という、年間2万人以上が死亡する感染性の大腸炎の治療法として一躍、注目を浴びました」
と語るのは、慶應大病院関係者である。
「CDには抗生剤が効かず、重症化すると命に関わる、欧米では深刻な感染症です。それが便移植を受けたCD患者の90%以上で治療効果が見られた。便を提供したドナーの中でも、特にCDを死滅させる効果が高かった便の主は『スーパードナー』と言われています。抗生剤が効かない菌ですら瞬く間に死滅させる腸内フローラの持ち主ですから、『スーパードナー』の便に含まれる腸内細菌や、腸内細菌が産生する物質がCDだけでなく、他の感染症や大腸疾患にも特効薬になるのではないかと研究が進んでいるのです」
そして日本国内で「スーパードナー」になると言われているのが、52歳にしていまだ現役、Jリーグのレジェンド三浦知良と、日米通算4367安打を誇るイチロー(45)なのだという。