1月6日午後、北朝鮮からまたも弾道ミサイルが発射され、日本のEEZ(排他的経済水域)の外側に落下したとみられる、と防衛省が発表した。防衛省によれば同ミサイルは北朝鮮内陸部から北東方向へ発射されたもので、最高高度はおよそ100キロ、飛行距離は1100キロ程度。北朝鮮による弾頭ミサイル発射は、この時が昨年11月5日以来で今年初。そして14日午前にも、北朝鮮が日本海に向け短距離弾道ミサイル数発発射したことを韓国軍が発表している。
北朝鮮事情通の話。
「6日のミサイル発射について韓国メディアは、トランプ次期大統領の就任を控え、アメリカの出方をうかがう狙いがあったのではないかと伝えていますが、誤ってEEZに落下した場合、大惨事になることは言うまでもない。日本政府も猛抗議しているようですが、引き続き強い姿勢で臨んでもらいたいものです」
ともあれ、トランプ氏就任を前にしたパフォーマンスだとしたら迷惑この上ない話。だが一方、韓国の対北朝鮮専門機関によれば、ミサイル発射は「日本に対する何らかのメッセージである可能性がある」との指摘もある。
北朝鮮の外交・安全保障政策の方向性など調査・分析している韓国のシンクタンク「峨山政策研究院」のチャ・ドゥヒョン副院長は8日、「2024年北朝鮮の対外政策評価と2025年の展望」をテーマにした報告書を発表した。
「同氏によれば、今年の北朝鮮は、ロシアとの関係をさらに密着させ、加えて朝中露、三角連携の強化と、日米韓協力の弱点を突く『通米封南(米国と通じ、韓国を封じる)』戦略を強化するのではないかと分析しています。ただ、北朝鮮はバイデン政権時代、完全にアメリカとのコンタクトが取れない状態になっていましたが、トランプ氏とは第一次政権時代に関係を深めていたこともあり、金正恩総書記としても当然、関係修復の実現に努めるはず。同氏によれば、北朝鮮側がその前段階として、日本との接触を画策する可能性があると分析しているんです」(同)
日本では昨年2月、岸田文雄前首相が北朝鮮との対話を模索したものの、日本人拉致問題の対立により、結果、対話は実現しなかった。現・石破茂首相も国内での支持率低迷が止まらない中、なんとか挽回のきっかけがほしいところ。そう考えると、現政権が水面下で北朝鮮との対話実現に向け動いている可能性も否定できない。
「むろん、正恩氏はそういった日本の現状も全て知っている。なので、最終的には『核保有国の地位』を既成事実化する狙いがあるにせよ、北朝鮮としては日本、さらにバックにいる米国と直に取引できる可能性は残しておきたい。そんな思惑から、今年は日本と北朝鮮の間で何らかの動きがあるのでは、というのが同氏の分析なんです」(同)
さらに、ドゥヒョン副院長は報告書の中で、ウクライナや中東問題や山積する中、トランプ政権の対外政策において北朝鮮問題の優先順位を引き上げるため、朝鮮半島での緊張が必要として「南北間の衝突リスクを高め、韓国を標的とした戦術核能力の強化を誇示するため、7回目の核実験などを実行する可能性がある」と指摘している。
つまり、アメリカを振り向かせたいがために今年もミサイルを打ちまくり、南北間の緊張を高め、北朝鮮問題の優先順位引き上げを画策しているのではないか、ということ。日本はこの姑息でしたたかな隣国といかにして付き合っていくべきか。北朝鮮との外交の行方は、石破政権の手腕にゆだねられている。
(灯倫太郎)