令和初のプロ野球・ドラフト会議は、高校生が大量指名された。将来性、育成の重要さが改めて問われたが、その主役である最速163キロ右腕・佐々木朗希(大船渡)に入札したのは4球団だった。奥川恭伸(星稜)、森下暢仁(明大)、石川昂弥(東邦)など、他にも好選手が多かった。しかし佐々木は一時、史上初の12球団入札も予想されていた。ドラフト直前に何があったのか。
「日本ハムを除く11球団が事前に佐々木と面談しました。それによって1位入札したのは、指名に成功した千葉ロッテ、地元・楽天、日本ハム、西武だけでした」(在京球団スタッフ)
理由はいくつかある。まず、佐々木が一人前になるまで「時間が掛かる」と判断されたこと。ユニフォーム姿のときも「線が細い」と感じるスカウトは少なくなかったが、面談時の学生服姿を見て、さらにその印象を強くした球団スタッフも少なくなかったそうだ。
「U-18大会中、右手中指にできた血マメも判断材料となりました。投げ込み量が少ない証拠です。プロの春季キャンプは走り込みと投げ込み。プロの練習についていけるのか、と」(同前)
投げるボールの質は、天下一品だ。ドラフト当時の松坂大輔、大谷翔平と比べても「上」と評するスカウトは多い。だが、彼らは体が頑丈だった。また、こんな情報も交錯していた。
「U-18大会中のメシですよ。大会会場となった韓国と言えば、焼肉。他選手はキムチやカクテキで白飯を頬張っていましたが、佐々木は辛い物が苦手。水になじめるか心配とも言っていたので、食生活や環境にも苦労しそう」(関係者)
スピンの掛かった163キロの剛球を欲しがる声は、どの球団も最後のスカウト会議まで止まなかったというが、競合になることと、そのあたりのデリケートさを勘案して即戦力選手へ方向転換したところもあったという。
「プロ志望届を提出した後の会見では『12球団OK』と言っていましたが、佐々木サイドにも育成方法に気がかりな球団があったようです」(同前)
佐々木は物静かな性格だ。「チョイ悪」くらいがちょうど良いとされるプロ野球界では多少苦労するかもしれないが、その“怪物”の素質を一日も早く開花させてほしいものだ。
(スポーツライター・飯山満)