日本酒「獺祭」といえば一時は入手困難になり、「日本酒ブーム」の火付け役などとも言われる。その獺祭が、今度はなんと「宇宙」で作られるのだという。
「獺祭の製造元である旭酒造が12月11日に計画を公表しました。なんでも、25年後半に米、麹、酵母、水を国際宇宙ステーション(ISS)に打ち上げ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した研究棟『きぼう』で醗酵を行い、そこで出来上がった醪(もろみ)を地球に持ち帰り絞って清酒にするとか。そして出来たお酒の『獺祭MOON―宇宙醸造』を1億円で販売し、売上は日本の今後の宇宙開発に寄附するのだそうです」(経済ジャーナリスト)
このところ世界各国が激しくしのぎを削り活発化している宇宙開発では、関連製造会社はもちろんのこと、通信会社や商社、金融などが主導する形で民間企業が続々と参入している。しかし酒造メーカーの参加は聞いたことがなく、もちろん宇宙での酒作りなどはまさに世界初となる試みだ。
実は旭酒造は山口県岩国市の地方酒造メーカーながら進取の気性に富んでいて、とうに日本国内を飛び出している。昨年9月には、米ニューヨーク郊外に80億円をかけ酒蔵を完成させ、74歳になる桜井博志会長自らアメリカに居を移し陣頭指揮にあたるという力の入れようで海外進出を進めてきた。その成果として、アメリカ産「DASSAI BLUE(獺祭ブルー)」が今年4月に逆輸入され日本でも販売されている。同社が海外進出を図ったのは、もちろん日本酒ブランドの世界的人気の高さがあってのことだが、一方で背に腹を変えられない切実な理由も背後にはあったようだ。
「日本酒に限らずですが、少子化で日本国内のマーケットが今後縮小していくのは必定。加えて日本では日本酒の出荷量がここ数十年でかなり落ちていて、1973年の170万キロリットルをピークに、2023年には39万キロリットルにまで落ち込んでいる。国内に引きこもっているわけにはいかなくなっているんです」(同)
とはいえ、そんな中での「宇宙」とは、相変わらずの攻めっぷりである。
(猫間滋)