イーロン・マスクはジェフ・ベゾスに勝って高笑い?「100兆円宇宙ビジネス」の最新動向

 国際宇宙ステーション(ISS)での約5カ月の滞在を終えた日本人宇宙飛行士の野口聡一さんが、5月2日にアメリカ・フロリダ州沖のメキシコ湾に着水し、無事地球に帰還した。

 この時に乗っていたアメリカの民間宇宙船は、クルードラゴン。アメリカの宇宙企業のスペースXが開発した、再生可能なカプセル型宇宙船で、年内に打ち上げ予定の民間人4人による地球周回飛行に、整備を整えた後、再び用いられる予定となっている。

 スペースXの社名は正式には「スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ」で、あのテスラのイーロン・マスクによって02年に設立された会社だ。つまり、マスクは電気自動車だけでなく、来るべき宇宙ビジネス本格化時代に向けてこちらも熱心に取り組んでいるのだが、そんなマスクに少し前、願ってもない朗報がもたらされたのだという。

「4月16日、NASAが主導してアメリカなどが進めている有人月面着陸のアルテミス計画の着陸船メーカーに、マスク率いるスペースX社が選ばれたのです。選定には、アマゾン創業者のジェフ・ベゾスのブルーオリジン社と、既に先行して軍事・宇宙ビジネスを手がけるノースロップ・グラマンの3者で争っていたところ、これらを押しのけてスペースXが勝利したわけですから、マスクは狂喜乱舞したとされています」(経済ジャーナリスト)

 何かと異端視されるマスク。だが宇宙はまだまだ「民間」にとっては未開拓のビジネスの場なだけに、正当も異端もない。そこで先行したということは、マスクが正当になるということだ。ましてやGAFAの一角を打ち倒したというもだから、大喜びするのもわかるというもの。

 ところで話は国内、それも北海道と急にローカルな場所に移るが、さらに田舎の大樹町というところに「宇宙港」(スペースポート)を建設する構想があり、そのための会社が4月20日付で設立された。と言うとなんだか唐突な感が拭えないが、ロケット発射に熱心な堀江貴文氏が関わっている宇宙開発のインターステラテクノロジズのロケット発射打ち上げ場所と言えば通りがいいだろう。となればいわば同町は日本における新規宇宙ビジネスの本拠地とも言える土地で、だからこそこういった構想が持ち上がるのも理解できるだろう。そして構想によれば、ここにロケット発射や宇宙往還機の滑走路などを整備する計画があり、それが本格的に動き出そうとしているのだという。

 洋の東西を問わずこういった宇宙関連の話が続々と出てくるのも、今年は民間の力を借りた宇宙開発の動きが目白押しで、一旦は東西冷戦の終焉で落ち着いた宇宙開発の再スタートに当たるとも言われているからだ。

「今年は野口さんだけでなく星出彰彦さんも4月に宇宙に旅立ち、先日もアメリカが火星で二酸化炭素から酸素を製造する実験に成功したり、中国が宇宙ステーションの建設に着手するなど、宇宙関連イベントが目白押しとなっています。なぜ宇宙ビジネスが活況を迎えているかと言えば、そこにはネットの存在があります。現在、地球の約70億人の人口のうち、ネットにアクセスできるのはうち40%でしかありません。一方で、衛星通信で5G接続環境を確立すればその範囲はさらに広がることになります。そういった背景があって、世界各国、世界の名だたる先進企業が宇宙に成長の場を求めているのです」(前出・ジャーナリスト)
 
 そこで期待されているのが、人とモノの輸送、観測・通信・放送のインフラの構築、衛星から取得したデータの地上ビジネスへの活用、旅行・滞在・移住、資源開発、軍事利用……と幅広く、2010年は27兆円規模だった宇宙ビジネスも、17年には38兆円まで膨れ、30年には70兆円、その後さらに100兆円まで拡大すると見られているという。

「2001年宇宙の旅」ならぬ「2021年宇宙の旅」がスタートしようとしているのだ。

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