テレビ局トップの「大本営発表」に耳を傾けてみると、不祥事の釈明や番組宣伝ばかり‥‥。と思いきや、ドラマの感想から女子アナの話題までざっくばらんなトークを展開していた。本音や思わぬ失言も漏れちゃった今年の定例会見“迷場面”をドドンッと一挙に公開しよう。
テレビで放送されることは滅多にないが、NHKも民放各局も会長・社長のトップが出席する「定例会見」を、月1ペースで開いている。芸能評論家の竹下光氏が解説する。
「普段は取材する側のメディアなので、自分たちもみなさんの取材を受けるという開かれたマスコミをアピールする狙いがあります。昔から会見自体は行われていましたが、スポーツ紙でわざわざ取り上げることもないので目立ちませんでした。ところが、コンプラに厳しい時代に突入し、ネットニュースで『定例会見』の発言が取り上げられるようになり、注目を集めているのです」
会見では、プロ野球の日本シリーズを放送するので熱戦を楽しみにしてくださいとか、局関連イベントのグッズが好調だったなど、宣伝や報告がほとんど。それでも、局側や番組に出演する芸能人の不祥事が起きれば、それなりの見解を発していた。
「取材するのは、局の制作ニュースを扱う担当記者で、いつもお馴染みの顔ぶれ。謝罪会見のように喧嘩腰で厳しく追及する場面はなく、あくまでも和やかな雰囲気です。それゆえに、思わず本音が漏れたり、社長のキャラ次第で会見に“色”が見えてくるので、追いかけてみると面白いんです」(竹下氏)
定例会見で毎回のように話題になるのは、故ジャニー喜多川氏の性加害問題だ。特にNHKは昨年9月以降、旧ジャニーズ事務所のタレントの出演を差し止めていた。しかし、10月16日の定例会見で、稲葉延雄会長(74)は被害者補償と再発防止策の取り組みが進んでいることを評価。制作現場の判断で出演依頼が可能となったと、ゴーサインを出した。
昨年のNHK紅白歌合戦では、44年ぶりに旧ジャニーズの出場者はゼロ。第1部で初めて平均世帯視聴率が30%を切ったこともあり、NHK側の思惑がスケスケだったことで、「紅白の出演打診も可能なのか」と質問されると、
「紅白歌合戦の制作に向けて判断したものではありません」
稲葉会長はきっぱり否定。思わずツッコミが入りそうなところだが、芸能記者はこう話す。
「1月の定例会見で紅白について、稲葉会長は、『財界人の知り合いには、ちっとも面白くなかったという人もいた』とぶっちゃけています。旧ジャニーズの出演にかかわらず、番組の中身をどうにかしろという思いが強かったのでしょう」
トップの意向を会見で知ることが多いというNHK関係者は、稲葉会長の定例会見の特徴をこう明かす。
「おしゃべりなので『かいつまんで報告する』と言いながら、長く説明するタイプ。実はドラマ好きで、大河ドラマ『光る君へ』の話題になると、感想が止まらなくなったこともありました。ギャルをテーマにした橋本環奈さん(25)がヒロインを務める連続テレビ小説『おむすび』が、中高年になかなか受け入れられないという質問には、『担当者もさらに面白くなると言っていました』と快活にアピール。さらには、視聴者さえ気に留めていないおばあちゃん直伝の“野菜染め”のシーンにまで言及していました」
“みなさまの稲葉会長”は、意外とフランクな性格なようだ。
(つづく)