日本では10月27日に衆議院選挙が行われ、自公政権の与党が過半数の議席を獲得できず、少数与党という難しい状況に追い込まれている。
議席を大幅に伸ばした立憲民主党の野田佳彦代表は政権交代のチャンスと位置付け、こちらも議席を4倍の28にまで伸ばした国民民主党の玉木雄一郎氏にラブコールを送っている。しかし、国民は“石破下ろし”で立憲と結束する姿勢は見せておらず、物事が一筋縄で行かないことを露呈した。少数与党となった自民も、これまでのような態度では予算などを簡単に通せないことから、国民に秋波を送るなど、生存競争をエスカレートさせている。
一方、今回の衆院選を各国はどう見ているのだろうか。
まず不安そうに見ているのが韓国だ。岸田政権は一昨年5月に発足した尹錫悦政権との関係を強化し、日韓関係はこの2年間で劇的に改善している。尹大統領は石破政権が岸田時代の対韓姿勢を堅持することに安堵していたが、衆院選の結果を受け自民党政権崩壊の可能性が出てきたことを強く懸念している。尹大統領からすれば、自民党政権だから日韓関係を改善することができたとの解釈があり、政党が違う政権の誕生によって日韓関係の強化が停滞するのではないかと不安視していることだろう。
また、米国にも似たような感情がある。政党を問わず、今後米国は中国との戦略的競争をエスカレートさせていくことになるが、その際に重要なパートナーとなるのが日本である。米国としては15年間も継続する自民党政権との間で関係を強化することができたという自負がある。しかし、まさかの立憲民主党政権の誕生となれば、2009年の日中首脳会談で「東シナ海を友愛の海に」などとした鳩山由紀夫総理時代のような政権が誕生し、自民党政権との間で構築されてきた日米関係が揺らいでいくことへの懸念があると思われる。
「東シナ海を友愛の海に」などは米国にとって悪夢のシナリオだが、中国にとっては「第2の鳩山政権」誕生はラッキーこの上ない出来事となる。
(北島豊)