健康宅配チェックシート〈ASD〉(2)視覚、聴覚、触覚のセンサーが過剰

 対人コミュニケーションにおいては皮肉も通じにくい。

「言葉の行間を察するのが苦手です。京都の『ぶぶ漬けでもどうどす?』は『早く帰ってください』の意味ですが、そのまま言葉通りにお茶漬けをおいしくいただいてしまうでしょう。また、ワンセンテンスでも言葉が足りないと指示が届かないことも‥‥。浴槽にお湯を溜めている時に『お風呂を見てきて』と言われても、ただ見るだけで戻ってくるのはよくある話。湯舟の縁からあふれそうになっても、止めるような機転が働かないんです。ASDの人が周囲にいたら、事細かに言語化した方がトラブルは未然に防げると思います」

 ちなみに「あれ」や「それ」などの「指示詞」や「ほどほど」のような曖昧な表現の理解も難しい。

 苦手分野は多岐にわたる。運動では球技全般が得意ではないようで、

「手足の動きを上手にコントロールできない『協調運動障害』を合併しているケースも多い。野球、テニス、バレーボールは〝天敵〟。立体視も劣っているから、キャッチボールやバレーのトスを顔面で受けてしまいがち。機能が欠けているので、練習してどうにかなるものでもありません」

 日常生活に支障をきたすレベルの感覚過敏にも悩まされるという。

「視覚、聴覚、触覚のセンサーが過剰に働いてしまいます。例えば、一般的に気にならない、近所の保育園で子供たちが遊ぶ声や社内で隣の会議室の声が騒音さながらに気になる。同様に、電車の2人席が空いていても隣の人の体が当たるのが嫌で座れません。満員電車で自分の体に他人が触れるのも嫌で朝5時台の電車で通勤している人も知っています」

 誰にでも大なり小なり心当たりがあるかもしれない。ただし、早合点はしない方がいい。

「最近はメディアの影響でみずから過剰診断をしてクリニックに来る人も少なくありません。『頑固』のようなポリシーめいたものではありません。あくまで病気ではなく〝特性〟なので、医者ができるのも治療というよりは教育や指導の範疇になる。忘れ物の対策では壁や天井に『ToDoリスト』で〝見える化〟し、電話でのやりとりだけでは『言った言わない』のトラブルになるため、それを防ぐ『確認メール』の徹底など、ライフハック(生活をする上での工夫)を実践していくべきでしょう」

 生きづらい環境であれば、自分に適した場所を求めるのも1つの選択肢である。

【ASD(自閉スペクトラム症)チェックシート⑮】

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①他人と話しているといつの間にか自分の話ばかりしてしまう 1点
②他人の怒りや悲しみの感情を理解できない 1点
③相手や周囲がなんで笑っているのか理解できない時がある 1点
④3人以上で会話をすると黙り込んでしまいがちだ 1点
⑤集合写真などでカメラを向けられても笑顔を作れない 1点
⑥「冗談」や「皮肉」の意味を理解できない 1点
⑦特定のことをやり抜く集中力がある 1点
⑧小学校の休み時間は1人で読書をしていた 1点
⑨長い行列に並ぶと貧乏ゆすりをしてしまう 1点
⑩周囲から「おっちょこちょい」あるいは「変わっている人」と言われる 1点
⑪マルチタスク(複数の作業)が苦手 2点
⑫どんなに練習しても球技全般が上達しない 2点
⑬マニュアルやルールから逸脱するのが気持ち悪い 2点
⑭満員電車で他人と当たるのが不快だ 2点
⑮掃除機や工事現場の音に耳を塞ぐことがままある 2点

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