パビリオン建設が遅れていたり、建設中の会場予定地でガス爆発が起こったりと、何かと問題ばかりで予定通りの開催が危ぶまれている大阪・関西万博。かと思えば今度は、万博開催後に建設されるIR(カジノを含む統合型リゾート)の工事が、万博開催中も隣接地で工事が進められることで、万博側とIR側の両陣営で主張が対立。大阪というくくりで言えば、〝内ゲバ〟とも言える争いに発展していることが明らかになった。
「大阪の情報に強い産経新聞が、8月25日に独自情報として、万博の国際的元締めである博覧会国際事務局(BIE、本部フランス・パリ)のディミトリ・ケルケンツェス事務局長のインタビューを掲載。そこで事務局長は、万博開催と同時並行で行われるIR建設に関し、工事によって発生する粉塵、騒音、物流の混乱などを理由に不快感を表しています。IR工事の同時進行について聞かされたのは今年6月になってのことで、19年から行われている話し合いの中では聞かされておらず、後出しジャンケンだというのです」(全国紙記者)
すると27日には自見英子万博担当大臣が、会見でこのことについて言及。「万博を最優先に」と大阪府・市に求めていると明かしたが、「では工事を中断して、30年のIR開業予定に支障をきたさないか」という具体的な解決については明言を避けた。それはそうだ。具体的な対策などないからだ。
この場合、対立の構図は、万博サイドはBIEと万博協会で、IR側は大阪府・市とIR事業者。具体的にIR事業者は、オリックスとアメリカのカジノ運営会社のMGMリゾーツを筆頭とする関連事業者ということになる。
「産経新聞ではIR事業者の声を紹介していますが、そこでは工事を中断したら1年以上、IRの完成が遅れ、その場合、数千億円の損失が発生するので、場合によってはIR事業者の撤退もあるというのです。もともと日本版IRは法案成立などで遅れ、そこにさらにコロナ禍が加わり、そもそもが相当遅れてきました。そして今度もまた工事で具体的な問題にブチ当たった。事業者側としては、『いい加減にしてくれ』というのは無理からぬことです」(同)
大阪の吉村洋文知事も27日にこのことに言及したが、国同様、具体策については触れられなかった。IR事業者には、26年9月末までなら、違約金無しで撤退できる解除権が設定されている。もし解除が発動されることになれば、無理くりに万博開催を強行してきた意味が半減どころでなく吹っ飛ぶ。この問題、もともと「進むも地獄、退くも地獄」だったのだが、さらに輪をかけられてしまった状況だ。
(猫間滋)