海上自衛隊の原子力潜水艦のメーカーである川崎重工が架空取引で裏金を捻出、乗組員を飲食接待したり商品券を渡していた問題。「年1億円超」や「10年以上」にわたって行われていたことなどが分かってきている。
「もちろん高度な技術力を求められる原子力潜水艦の製造ですから、日本では川崎重工と三菱重工の2社のみで建造を請け負っていて、防衛省では1年ごと交互に両社と契約を結んできました。また今回の問題が浮上したのは川重神戸工場の修繕部門であり、毎年行われる『年次検査』と3年に1度行われる『定期検査』を巡っての不正ですが、関係者の間では『2社しかないのになぜ?』という声も聞こえてきます」(全国紙記者)
たかが修理とはいえ、やはり原子力潜水艦。メンテだけで年百数十億円に及ぶというのだから、まさに巨額利権だ。それを接待で引き寄せようとしていたというのだから実にけしからん話。だが、利益供与の中身にニンテンドースイッチがあったとか、家電や釣り具などを買ってあげていたことが伝わるや、まるで子どもが親にクリスマスプレゼントをねだるような光景が思い浮かび、SNSでは「自衛隊の待遇が悪いからだ」といった声が上がる始末だ。
というのも、自衛隊はなり手が少なく人手不足が深刻で、現場オペレーションの苦しさが垣間見られる。裏金報道の最中、7月8日に防衛省が報告したところでは、昨年度は1万9600人の募集に対し、採用されたのは1万人弱、過去最低だったという。
また9日には、倍増された23年度の防衛予算のうち、1300億円の使い残しがあったことが判明。林芳正官房長官は会見で、装備の契約や人件費などで予定を下回ったとしたが、これこそまさに、人員を確保できず、頭数が足りないために事務の遅れ生じた“キャパオーバー”を端的に示している。
「防衛省では現在、いわゆる『背広組』と呼ばれる防衛官僚が威圧的言動を行っていたとされるパワハラ、海自・陸自で特定秘密を取り扱う資格のない隊員が実際は取り扱いを行っていた特定秘密漏洩、海自の潜水士が実際には行っていなかった潜水の手当を長年受給していた不正受給などが明らかになっており、“不正のデパート化”して追及を受けているところです」(同)
ただ、なかには深刻な人手不足が原因であると思われるものも含まれる。だから出るべくして出た問題なのだろうが、その裏側では現場の悲鳴も聞こえてくるようだ。果たしてこんなことで自衛隊は日本を守れるのだろうか。
(猫間滋)