日経平均株価が史上最高値を更新する中、投資の初心者にも人気が高い「NTT株」の乱高下が止まらない。1月に192・9円の高値を付けて以降は下降線をたどり、6月には144.0円の安値を付けた。わずか半年間で20%を超える下落率に。ただ、下落があれば上昇もあるのが株の世界。安値の今、夏のボーナスを投入するべきか、それとも様子見か─。
1月23日の輝かしい過去最高値よ、もう一度‥‥そう思いたくなるほどの急落に見舞われている「NTT株」=日本電信電話(株)【9432】。7月4日の終値は157.6円と回復傾向にあるものの、そもそも今回の大幅下落は、なぜ起こってしまったのか。
独学で6億円を稼いだ投資家で、企業家・ビジネス作家の顔も持つ上岡正明氏が次のように解説する。
「NTTは日本を代表する通信会社の一つですし利回りもいいため、メディアだけでなく、銀行や証券会社がオススメする投資先でもあります。というのも、NTTは新NISAに向けて去年7月に1株を25分割にしました。これにより、40万円ほどの元手がないと購入できなかったNTT株が1万円台という安価で購入できるようになった。元々人気のある銘柄で、買いやすくなったことにより、新NISAをきっかけに投資を始めたライト層を取り込むことに成功しました」
聞けば、順調に思えるNTTの戦略だが「ここに落とし穴がある」と上岡氏は注意を促す。
「確かに個人投資家が一気にNTT株を購入して、一時は高値となりました。しかし、高値追いになるためには資本力のある海外投資家が手を出さないと、さらなる上昇は見込めません。実際、投資ビギナーによる“買い”が過熱したものの、思うように株価が上がらず『新NISAはオワコン』『国に騙された』と“売り”に走ってしまう人が増加してしまったばかりか、25年3月期の決算見通しでは増収減益、つまり、決算が悪化する予想となっています。これも大きなきっかけですね」
とはいえ、4月から6月後半までの調整局面では、株価が下がっていたのはNTTだけではないだけに、もう少し広い視野で動向を見守る必要があるという。
「実は、今年に入ってからKDDI=【9433】やトヨタ=トヨタ自動車(株)【7203】といった大手企業の株もかなり下落しています。元々人気株のNTTだからこそ、悲観論が盛り上がっているのでしょうね。それに7、8月は“夏枯れ相場”と言われており、1年の中でも株価が低迷する時期でもあります。ここで一度停滞してしまうのもしょうがないと思いますよ」(上岡氏)
(つづく)