ディフェンディングチャンピオンの出馬表明で、合戦の火ぶたが切られた東京都知事選’24。とはいえ、その内情にはランクの違いが見え隠れ。そればかりか、水面下では永田町に棲息する女性政治家たちの格付けまでが云々されているのである。
「互いのイメージ戦略をぶつけ合う『空中戦』の様相を見せています」
こう東京都知事選(7月7日投票)を〝将棋の盤上〟になぞらえて解説するのは政治ジャーナリストの青山和弘氏だ。6月20日の告示前から、さながら現職の小池百合子都知事(71)と蓮舫参院議員(56)が一騎打ちを繰り広げている。まず、先手を打ったのは「挑戦者」の方だった。先の青山氏が続ける。
「蓮舫さんはみずからの『若さ』も武器にしようとしています。小池さんが立候補を表明したタイミングで、立憲民主党を離党したのは最たる例。かつてのクラリオンガールも50代後半となりましたが、テレビ画面に対比して映ることで、15歳差をわかりやすくアピールすることができた。今後も小池さんをなぞるような動きになると思います」
背後から加勢するのが、みずからを「悪友」と公言する辻元清美参院議員(64)。6月9日にJR阿佐ヶ谷駅前で行われた街頭演説でも「『アンタ、都知事どう?』というのを相当前からチョロチョロ言うてた」と、背中を押した1人として熱いエールだ。そんな2人のパワーバランスについて、政治ジャーナリストの宮崎信行氏が解説する。
「国会で政治腐敗を追及してきた盟友で、互いにタメ口で話す関係です。しかし、党内では代表代行を務める辻元さんの方が格上なんです。社民党出身の外様ではありますが、〝左翼スポンサー〟からも覚えめでたく、集金能力は党内トップクラス。枝野幸男前代表(60)が立憲民主党を立ち上げた時にも、多額の政治資金を引っ張ってきた逸話を残しているほど。たとえるなら、盤上を駆け回る『角』さながらに主力となる存在です」
一方で「ニコイチ」の片割れには、このところいささかかげりが見えていたようで、
「ここ数年の蓮舫さんはピークが過ぎた印象です。筆頭理事とはいえ、1年生議員にあてがわれる『文教科学委員会』に就くなど、党の要職から遠ざかっています。それでも有権者への知名度が党内で群を抜き、田舎町や離島の街宣に告知なしで数百人規模の動員を見込めるのは彼女だけ。少なくとも『銀』の地位はキープしている」(宮崎氏)
相手は過去に負けたことのない現職候補だ。いわば天下の「王将」である。「悪友」の力を借りてでも、なんとか退けたいが‥‥。
「小池都知事は完全に体制側にいます。都議会の自民党会派を批判するなどの改革路線を敷いていたのも昔の話。17年の千代田区長選で『都議会のドン』とも呼ばれた内田茂氏を政界引退に追いやってからは、自民党と手を組んで都政を牛耳る立場になった。今回の都知事選でも、公明党や連合東京の選挙協力で組織票を確保している。片や蓮舫氏は共産党の支援が色濃く〝援軍〟に乏しい状況です」(全国紙政治部デスク)
痛恨の「悪手」で勝敗は、戦う前からついたも同然か。そもそも、敗戦した場合のシナリオにも抜かりはないという。永田町関係者が明かす。
「落選しても都知事選後の立憲民主党復帰と衆議院議員出馬が約束されている。しかも新設される東京26区(目黒・大田区)で選定途中の支部長就任まで内々定しているんだとか。退路を断っての出馬ではなく、いわば『2位でもいい』という安全圏から小池氏を〝砲撃〟しているに過ぎません。昨年、離党して無所属として同選挙に同区で出馬予定の松原仁衆院議員(67)も、不満を漏らしているといいます」
その一方で勝利を確信している小池都知事は、その先に国政復帰のロードマップまで描いているというしたたかさだ。
(づつく)