別の観点から、今の株高は日本経済の実体と乖離した状況になっていると指摘するのは経済評論家の斎藤満氏だ。
「12年からの7年半、安倍晋三元首相と黒田東彦前日銀総裁がまやかしの金融政策で円安に誘導しました。それにあぐらをかいた輸出企業は競争力が落ちていき、その結果が名目GDPで4位転落という日本経済の沈滞です。
一方で、海外投資家にとっては日本株が割安となって買い上げられ、ここまで高騰した。国内消費がこれほど弱いのなら、普通は株価が下がるもの。それが史上最高値を更新するのですから、歪んだ形の株高としか言いようがありません」
大企業の好業績が日経平均を押し上げる一方で、中小事業者の倒産は増え、実質賃金もマイナスが続く。経済を下支えする中小が苦しみ、大企業ばかりが潤う構造はいびつというしかない。
実際、東京商工リサーチの調査によれば、23年の企業倒産は前年比35%増の8690件、92年以来の増加を記録した。今年1月も前年同月比23%増の701件。22カ月連続の増加となり、倒産増に歯止めがかからない状況なのだ。このうち負債総額1億円未満が7割超を占め、飲食を含む小さな企業の苦境がますます深刻化している。
倒産増の背景には、原材料費の高騰やコロナ禍対応で借り入れた実質無利子・無担保融資の返済、人手不足などがある。
中でも原材料費高騰を巡っては、取引先の大企業が価格転嫁に難色を示したため、納入品を十分値上げできない中小の経営者が追い込まれるという構図が常態化している。斎藤氏に続けてもらおう。
「日本企業、特に大企業の経営者は株主への配慮を強く意識しています。利益を上げても投資や人件費に還元せずに、自社株買いに充てて、株の需給改善、株高を演出しています。投資家はこれを好感してまた株を買う。米国企業だけでなく、日本企業も近年、自社株買いを高める傾向にあります。
つまり、日本の大企業では会社と従業員との間で〝取り分〟に極端な差があり、それと引き換えに株価が上がっているとも言える。こんな状況ではどこかで歪みが出るし、持続可能だとは思えません」
ロータス投資研究所代表の中西文行氏も、数字だけ見て浮かれるのではなく、冷静に判断する必要があると注意を喚起する。
「相場としては、すでに〝売り場〟。今から株を買いあさるのは愚の骨頂です。これから、各企業で年度末決算が発表されていきますが、今の円安基調を反映し、過去最高益という見出しが躍るはず。そこが売り場のピークとなるでしょう。
日銀はETF(金融商品取引所に上場している投資信託)を山ほど買って株式市場を下支えしていますが、決算発表が続く3月末まではそれが続く。相場を大きく崩したくないからです。しかし、4月には状況がガラッと変わる可能性が出てくる。『決算対策も終わったし、後はどうなってもいい』というわけです」
(つづく)