「1日で7ケタ儲かった」「半導体株が熱い」「4万円台も間もない」株価の史上最高値の更新に歓喜の声が飛び交った。しかし、ウハウハが止まらないのは一部の投資家のみ。多くの庶民は、上がらない給料と物価高でがんじがらめ。にわか好景気を演出する〝令和バブル〟騒ぎなどに踊らされるなかれ‥‥。
日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を塗り替えた。2月22日、バブル期につけた3万8915円を超え、3万9098円で取引を終えたのだ。
日本株は長く、米国株に比べて出遅れが指摘されてきたが、この1年で右肩上がりの上昇を見せてきた。23年初めに2万5000円台だった日経平均は同年5月に3万円台を回復、24年初頭から一段と〝上げ足〟を強めた。円安を追い風に最高益の大手企業が続出したことが土台となった格好だ。
だが、株価急騰の背景を仔細に見れば浮かれてばかりもいられまい。
岡三経済研究所チャーチスト、SMBCフレンド証券投資情報部長などを経て、現在はロータス投資研究所代表の中西文行氏がかつてのバブルとの違いを解説する。
「バブル崩壊直後の93年末、当時の東証1部に上場していた企業数は1234社。それが22年4月には2176社に増えました。現在の東証プライム上場企業数は1655社。旧東証1部に比べ、プライム市場の企業数が減少したにもかかわらず、時価総額(市場が評価した企業そのものの価値。上場株式数×株価で算出)は増加した。すなわち、一部の企業群の株価だけが上昇し、全体の時価総額を押し上げたわけです」
そもそも中西氏は、現在の株価高騰に大いなる違和感を持つと言う。
「まず、国内の景気が株価に反して圧倒的によくない。加えて、政権政党の裏金問題で経済の司令塔機能が麻痺している。
国外情勢に目を向けると、ウクライナとロシア、ハマスとイスラエルによる紛争の長期化で、原油などの国際商品市況がどう動くか、先が読めない。こういった不安定な状況にもかかわらず、株価だけが史上最高値をうかがう勢いで上がっているわけです」
一体、株価上昇の要因はどこにあるのか。相場を特に牽引しているのが半導体銘柄であるという点では、市場関係者の見方は一致している。AI(人工知能)ブームで日米の市況が急回復したというのだ。
将来の利益増を当て込んで買われることが多い半導体などのハイテク株は金利低下で値上がりしやすい。米国の利下げや、日本銀行の金融緩和継続への期待も値上がりの一因になっているという。
もちろん、それだけが理由ではない。
「確かに、上がっているのは日経平均採用の225銘柄のうちの半導体関連銘柄です。“ハイテク値がさ株”と言われている日経平均株価指数への寄与度が高い銘柄ですね。これを海外の投資家が買い上げている。
海外の投資家は、自分たちがハイテク株を買うことで指数が上がると思えば、先物取引(将来の定められた時点に、予め決められた価格で売買する取引)でどんどん買う。米国の株価を牽引するGAFA株が代表的ですが、こういった海外でのハイテク株ブームの『鏡相場』で日本の関連銘柄も買われている。マーケット全体を見れば、上がっていない銘柄も山ほどあり、一部の木を見て森全体がすごいと考えるのは誤りです」(中西氏)
令和バブルどころか、一部の企業だけが利するカラ騒ぎだというのだ。
(つづく)