投資から“逃避”へ、新NISAで進むキャピタルフライト

 今年になって新NISAがスタートしたが、株式市場にどんな影響が出たか。

「1月9~12日の東証の投資部門別売買状況を見ると、外国人投資家が1.4兆円台の爆買いで、新NISAを含む個人が1.2兆円台の売り。投資信託も約2400億円弱の売りなので、年初すぐに3万5000円を超えて、1月23日にはとうとう3万6000円を突破して好調な株式市場では、新NISAで日本人投資家は売りで利益を確定。市場に出回った株を海外投資家が買い集めて株価が上がって外国人投資家はニンマリといった状況です」(経済ジャーナリスト)

 そして今、もともと新NISAスタート前から予想はされていたが、実際にこうなっていることで盛んに言われて危機が叫ばれているのが、「貯蓄から投資」ならぬ「投資から逃避」だ。新NISAで日本人が弱い日本株を買うより、海外資産を保有、キャピタルフライトが進みつつあるというわけだ。

「日本人の売り先行の中には、体力のあるアメリカ株を買うための資金捻出という動きも含まれているでしょう。そうしてキャピタルフライト(資産逃亡)が進むと相対的に円が弱くなります。例えば日本総研などは、今後4年で最大4兆円の資産が国外に流出し、円安圧力になる可能性まで指摘しているほどです」(同)

 するとアメリカでは、19日にS&P総合500種で過去最高値を記録。割高感も増しはするが、もともと強いアメリカ株にさらに期待が高まり、富裕層の間でよりキャピタルフライトが進むかもしれない。

 新NISAの導入を決めた岸田首相は、「インベスト・イン・キシダ」と言って、日本への投資を募って、確かにそれは成功しているようにも見えるが、同時に日本の国内資産は「ラン・アウェイ・フロム・キシダ」に動いているという強烈な皮肉となっている。

(猫間滋)

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