テリー 1999年の「児童買春・児童ポルノ等禁止法」の成立に尽力されましたよね。その立場から今のジャニーズ事務所の件をどうご覧になっていますか。
野田 まずはその法律を作ったにもかかわらず、その被害者の方々から一切アクセスがなかったのが残念だなというのが、率直な感想ですね。当時、被害者の方々と接点ができていれば、また違う形になったのかもしれない。もちろん、大きな壁があって、言えなかったんだろうなとは思うんですけど。
テリー また、もし野田さんのところに届いたとしても、当時のマスコミが取り上げたかなっていう。
野田 そこですよね。私、今、自民党の「情報通信戦略調査会長」という役職に就いていて、放送業界の方々も仕事仲間なんですけど、やっぱり巨大メディアが隠蔽しちゃったらわからないですよね。いくら文春砲がすごくても、やっぱりそれがバズるのはテレビの影響が大きいですから。そのテレビが取り上げるのをやめてしまうと、「やっぱり噂なんだ」っていうことになって、なかなか全国までは届かないですよね。
テリー あと、あればビッグモーターなんかと同じ構図で。例えば民放がニュースで取り上げると、ビッグモーターはその局にCMを出さなくなるし、ジャニーズは自分のところのタレントを出さなくなっちゃう。
野田 そうらしいですね。
テリー そうすると、どの局もにらみ合いで、「最初にうちが報道しよう」というところはなかったですよね。
野田 女性の被害者も同じですよね。誰かが声を上げない限り、ずっと闇の中で。だから私たちはその受け皿を作っているつもりなんですけど、まだまだ足りないんだなと。
テリー 「受け皿」というのは、どんなものがあるんですか。
野田 色々ありますけど、例えば私が孤独・孤立対策大臣だったときに「孤独・孤立相談ダイヤル」というのを作ったんですよ。男性でも女性でも、老いも若きも子供でも「苦しい」と思ったら、「#9999」に問い合わせてくださいっていう。
テリー それは「今、孤独でツラいです」っていう人が電話すればいいんですか。
野田 それ以外にも生活困窮やDV被害、シングルマザーとか、幅広い相談窓口を一本化した形ですね。そこから専門家や自治体の支援に繋げられるようにというのが狙いです。
テリー じゃあ、もう少し幅広い感じで。
野田 そうですね。「#9999」にしたのは、昔からよくある電話番号の語呂合わせって、子供とか気持ちが不安定な人たちが覚えられるような番号じゃないんですね。
テリー 例えば「良い風呂」で「4126」みたいなのは覚えづらいんだ。
野田 違う番号がいくつもあると覚えられないですよね。うち、息子が中度の知的障害じゃないですか。だから、息子が親の知らない間に嫌な目にあった時に、「助けて」って言えるためには、彼が使える番号がいいなと思ったんですよ。それで息子に「#9999って覚えられる?」って聞いたら覚えられたんです。
テリー へぇ。
野田 語呂合わせって、東大を出た官僚が決めてる数字でしかなくて、実際にはそうじゃない人たちが被害者になるんですね。だから、その人たちがわかる番号にしようということで、今は進んでますね。(※孤独・孤立相談ダイヤル#9999は現在、試行段階であるため常時相談できるものではありません)
ゲスト:野田聖子(のだ・せいこ)1960年、福岡県生まれ。1987年、当時最年少の26歳で岐阜県議会議員に初当選。1993年、衆議院議員初当選。1996年に郵政政務次官、1998年に郵政大臣を務める。2005年、いわゆる郵政選挙の影響で、自民党を離党。2006年、復党。以降、消費者行政推進担当大臣、自由民主党総務会長、総務大臣、自由民主党幹事長代行、こども政策担当大臣などを歴任する。現在は自由民主党情報通信戦略調査会長。最新著書「野田聖子のつくりかた」(CCCメディアハウス)発売中。