神田伯山「聖地巡礼には講談がいちばん向いている」/テリー伊藤対談(1)

 マイナーだった世界に彗星のごとく現れ、光を当て続けている講談師・神田伯山。最新著書「講談放浪記」を上梓し、ついに当対談に殴り込みだ! そのあまりの優秀さに天才テリーも落ち込み気味!? 講談の魅力や今後について、たっぷり語ってもらった。

テリー この本(「講談放浪記」)読ませていただきました。これ読むと、伯山さんの見方が変わりますね。

伯山 ありがとうございます。それ、皆さんに言われるんですよ。「伯山さんって、意外とちゃんとしてるんですね」って(笑)。

テリー ちゃんとしてるし、すごいよね。講談のゆかりの地へわざわざ足を運んで、こんな風に勉強してるのかっていう。

伯山 世の中、聖地巡礼というのがアニメとかでも流行ってますけど、それにいちばん向いてるジャンルが講談じゃないかと思うんですよ。普通に歩いてる日常の景色の中で、「何だかよくわからない寺だな」と思っていたのが、そこに物語があると知るだけで見え方が変わるし、もっと楽しめるようになる。講談もそんな風に楽しんでいただけたらという単純な動機で出させていただきました。

テリー (今の)千葉が舞台の「天保水滸伝」のゆかりの地も訪ねてるじゃないですか。

伯山 東庄町にある諏訪大神や天保水滸伝遺品館ですね。

テリー うちの両親の生まれが千葉なんですよ。ちょうど房総がおふくろの実家で。だから子供の頃よくこの話は親父から聞かされて、僕も大好きなんですよ。

伯山 ああ、そうですか。テリーさんにそう言っていただけるとうれしいな。でも今、コンプライアンスの関係で、俠客物ってやりづらくなってるんですよ。国定忠治の生誕200年とかの祭をやろうとしたら、「なぜヤクザの生誕を税金で祝わなきゃいけないんだ」というクレームが自治体にいっぱい来て、ダメになってしまったり。

テリー ああ、そうなんだ。

伯山 ただ唯一、その東庄町だけ「天保水滸伝」で町おこしをやってるんです。ボランティアガイドの方が大勢いて、「みんな、天保水滸伝って知ってる?」とかやってくれていて。

テリー そうなんだ(笑)。さすが千葉だな。でも、そういうことを知るだけでも物語が身近になりますよね。

伯山 そう思います。僕、高崎山の猿を見た時に、900匹くらいいたんですけど、普通に「みんな猿だな」と思って見てたんですよ。だけど、「この群れにはA群、B群、C群があって、A群のボスはこの子で、B群のこのメスに恋をしてるんだよ」とか説明を聞いた途端に、物語性を帯びて、猿の顔が微妙に違うことにも気づいたりしたんですね。

テリー わかります。そういうガイダンスがあるとね。

伯山 だから、まさにこの本がそうなってたらいいなと思いますね。

テリー また伯山さんが聖地巡礼しているところがYouTube(「神田伯山ティービィー」)でも見られるのがおもしろいですね。

伯山 文字を読むのが苦手な方もいらっしゃると思いますので、そういう方はまずYouTubeをご覧いただいて。高座、本、YouTube、そして現場にも行っていただけると、かなり理解が深まると思いますね。

ゲスト:神田伯山(かんだ・はくざん)1983年、東京都生まれ。2007年、三代目神田松鯉に入門し、「松之丞」に。2012年、二ツ目昇進。2020年、真打昇進と同時に「六代目神田伯山」を襲名。「神田伯山のこれがわが社の黒歴史」(NHK)、「問わず語りの神田伯山」(TBSラジオ)にレギュラー出演中。YouTubeチャンネル「神田伯山ティービィー」にて動画配信中。最新著書「講談放浪記」(講談社)発売中。

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