いよいよ北朝鮮による、ロシアへの本格的な武器弾薬の供与が始まったのだろうか。
9月にロシアで行われた、プーチン大統領と金正恩総書記との首脳会談で、軍事分野での協力が協議されたと報じられてから約1カ月。アメリカのCSIS(戦略国際問題研究所)が、今月5日にロシア国境に近い北朝鮮北部「豆満江」駅周辺を撮影した衛星写真を公表。そこには過去5年間で「例のない」73両もの貨物車両が映り込んでおり、「貨車がシートで覆われているため貨物は特定できないものの、ロシアへの武器弾薬である公算が大きい」と結論づけたことで、西側諸国に衝撃が広がっている。
「同研究所によれば、過去5年間で同駅に20両を超える貨車が集まった事例は1度もなく、鉄道施設が拡大されている点、さらに周辺の厳重な警備状況から考えても、機密性の高い商品を取り扱うための準備であることは間違いない、と公表。米CBSも米政府当局関係者の話として、『今回の兵器移転が新しい長期供給の始まりなのか定かではないが、北朝鮮がロシアに大砲を移転し始めた可能性は極めて高い』と報じています」(通信社記者)
両首脳が、ロシアのアムール州ボストーチヌイ宇宙基地で会談を行ったのは先日13日のこと。会談後、プーチン大統領は「軍事協力には一定の制約(国連安保理の対北朝鮮制裁)があるものの、協議・検討することは可能だ」として前向きであることを示唆していた。
ただし、北朝鮮はすでに昨年12月からロシアの民間軍事会社ワグネルに対し、歩兵用ロケットやミサイルなどを販売しており、米政府によれば、北朝鮮はロシアの兵器で使用可能な砲弾を100万トン以上備蓄しているとの情報もある。
「両首脳は会談後、声明や合意文の発表もしていないため、北朝鮮がロシアへ兵器を供与する代わりに何を見返りとして要求したのかは不明ですが、餓死者が続出するほど食糧難が深刻化する中でも、北朝鮮はロシアからの食糧支援提案を断っていますからね。そこまでして、手にしたいものとなれば、核やミサイル開発技術をおいて他はないはず。ただ、これで立場が難しくなるのが中国です。この取引を傍観するのか、あるいは日米韓との過度の緊張を懸念して反対姿勢を示すのか。この取引の裏には中国から多額の支援を引き出そうとする露朝両国の思惑があるとの見方もあります」(同)
北朝鮮は10月に軍事偵察衛星を打ち上げると予告、さらに国際的緊張を煽っている。北朝鮮からの武器供与で、中露朝のパワーバランスも混迷を極めそうだ。
(灯倫太郎)