米紙ニューヨーク・タイムズが4日、北朝鮮の金正恩総書記が今月ウラジオストクを訪問、「東方経済フォーラム」に出席し、プーチン大統領と会談する見通しだと報じた。同フォーラムは極東ウラジオストクで10〜13日の日程で行われる予定だが、タス通信によればプーチンの出席する全体会合は12日。会談の日程や会談場所などは明らかになっていないが、ニューヨーク・タイムズは金氏が、装甲列車でロシアまで移動する可能性が高いと伝えている。
「今回、両首脳の会談が実現すれば、2019年4月以来4年ぶりということになります。むろん、金総書記のロシア訪問の狙いは、対ウクライナ戦における武器弾薬提供と引き換えに、ロシアから食料援助を得ようとしていることは言うまでもない。また、人工衛星と原子力潜水艦計画を推し進める北朝鮮が、ロシアから技術面のサポートを望んでいるとも見られています」(北朝鮮ウォッチャー)
さて、4年ぶりの首脳会談のニュースが大きくクローズアップされる中、北朝鮮国内の歪んだ実態がまたもや明らかになった。産経新聞が3日に報じた、正恩氏の最側近らによる不正蓄財や収賄といった汚職疑惑だ。
「記事は北朝鮮元外交官の高英煥氏のリポートをベースに書かれたものですが、同氏は韓国統一省直属の諮問委員で、韓国政府の対北政策にも大きな影響力を持つ人物。同氏が脱北者や人民軍幹部らから得た証言によれば、現在、北朝鮮で不正疑惑の渦中にいるのが、正恩氏の側近として知られる、玄松月党宣伝扇動部副部長と李善権党統一戦線部長だというのです。玄氏は、元人気歌手出身で2018年の平昌冬季五輪で、北朝鮮芸術団を率いて訪韓し、話題になりました。また、正恩氏とは彼が海外留学時代から親密な関係にあることから『元カノ』と噂されたこともあり、ここ数年は正恩氏の秘書役も担ってきたいわば側近中の側近と言っていい女性です」(同)
記事によれば、玄氏は党本部の仕事を担う裏で、貿易会社を経営。私的に外貨を蓄財しているばかりか、地位を利用して不祥事のもみ消しをする見返りに多額の賄賂を受け取ってきたという。だが、彼女が正恩氏と特別な関係であることから、不正調査機関である党規律調査部も忖度し、彼女に手が出せない状態だというのだ。
「経済難が続く中、度重なる党幹部たちの不正発覚で、国民の不満はもはや限界寸前。このままいけば体制基盤を揺るがしかねないとの判断で、21年には正恩氏の肝いりで党幹部の不正を摘発する規律調査部が創設されたのですが、成果は上がっていないと言われます。つまり、権力者なら何をしようが下は見て見ぬふり。逆に国民に対しては拘束や告発をちらつかせて当局が賄賂を要求する日常は以前と何ら変わっていません」(同)
今年1月に国際的な汚職監視団体「トランスペアレンシー・インターナショナル」が発表した2022年の「汚職腐敗度指数(CPI)」ランキングで、世界180の国・地域のうち「腐敗認識指数」でワースト5位に選ばれた北朝鮮。悲しいかな、またしても“ワイロ国”の面目躍如となった。
(灯倫太郎)