総務省は8月18日に7月の消費者物価の上昇率が3.1%だったと公表した。これで3%以上の物価上昇が11カ月も続いたことになる。つい数年前まで物価が下がっていくデフレ経済に悩んでいた日本で、3%という数字も驚きだが、多くの人は、もっと物価は上がっていると感じているのではなかろうか?
ガソリン代は全国平均で1リットル180円を超えたし、食品からも交通費、光熱費までも何でも上がっている。それらはどんどん値上がりしていて、多くがこの1年で少なくとも10%は値上がりしているはず。中には50%以上値上がりしたものもある。
政府の発表する数字は不要不急のもの、つまり今すぐ買わなくても大丈夫なものと、毎日の生活に必要なものを一緒にして計算するから、3%という悠長な数字になるのだ。
それでも給料が上がればいいが、多くの国民の生活は、1年前と比べてると、苦しくなっているのだ。
さらに、毎日の生活を絞りに絞って節約してためた貯蓄も、1年に3%も物価が値上がりすれば、その価値は目減りしていく。
もしも毎年3%の物価上昇が10年間続いたら、1万円の商品は1万3439円になる。今の1万円は10年後に7374円の価値しかなくなってしまうのだ。
この10年で金融資産が1億円以上の富裕層、5億円以上の超富裕層は大きく増えて、今や合計で148万5000世帯もあるという。日本の世帯数は5800万くらいだから3%弱の世帯が富裕層か超富裕層となる。これらの世帯の多くが、お金がお金を生む投資で資産を増やしたのだ。
だから今、貯蓄のある人は、その一部を投資に回してお金を増やすことも考えてほしいのだ。それをしなければ、手持ちの金は目減りするばかりで、老後はおろか、5年先の生活も貧相になってしまう。
「そんなこといったって、俺にはお金がない」とか、「何からやればいいのか、わからないよ」という人もいるだろう。
そんな人にまずオススメしたい銘柄は、6月末に25分割されて買いやすくなった「NTT」(銘柄コード9432)だ。単位株である100株買うのに必要な資金は8月28日現在で1万6600円ほど。100株だけ買って株式はどういう時に上がったり、下がったりするのか、ゆっくりと経験してもらいたい。
買う時は税金の免除があるNISA枠で買ってほしいのと、しばらくは100株だけにしてもらいたい。NTTは日本を代表する一流会社で倒産する可能性が極めて低いし、現在のところ1年で500円の配当金が出る。買った価格に対して3%ほどになる。
さらに今のところ、2年後と5年後に株主優待もある。2年後に電子マネーのdポイントが1500ポイント、5年後に3000ポイントの合計4500ポイントがもらえるというもの。コンビニなど多くのお店で4500円相当の買い物ができるわけだ。
1万6600円でNTTを買うと、5年間で合計2500円の配当金と4500ポイントで7000円分のリターンがある。
もちろん、配当金や優待も減らされたり、廃止されることもあるのでリスクはあるが、このまま株主還元が継続されるとなれば、株価が多少下がっても、決して損はないと思うのだ。
それなら100株とはいわず、200株、300株と多く買えば、それだけ得になるのかというと、配当金は増えていくが、株主優待は100株でも1万株でも同じ4500ポイント。どうしてももっと買ってみたいと思うのなら、例えば家族名義の口座を開設して別名義で買ってもらうしかない。
まあ100株買って5年間、配当金とdポイントをもらいながら、株価が上がったり下がったりするのを経験して、株式というものに少し慣れてみる。それに最適な銘柄だと思うのだ。
佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。著書「素人はボロ儲けを狙うのはおやめなさい 安心・安全・確実な投資の教科書」(扶桑社)ほか多数。