少子化対策や防衛費倍増ばかりに注目が集まりがちだが、生活に身近なところでは、全国の鉄道の「赤字路線」の今後も、岸田政権に突きつけられている難題だ。
国交省ではこの問題について検討会を設置しており、同会から提言を受ける形で、4月21日にはローカル線の再編や利用促進のための「改正地域公共交通活性化再生法」などの関連法案が提出され参院で可決された。
「法令により、国が主導して自治体や事業者が参加する協議会が設置され、赤字路線を存続させるか、バスなど代替輸送に転換するかが話し合われます。その結論によって国が財政支援を行うことになる」(経済ジャーナリスト)
「赤字路線廃止法」とも言われるこの法令。確かに、同法令の対象となりそうな赤字路線は全国にゴマンとある。
例えば千葉県は5月8日、JR東日本のJR久留里線「久留里〜上総亀山」の区間について「沿線地域交通検討会」を設置するとしたが、その久留里線の実態は悲惨のひと言だ。
「久留里線は房総半島の中央部を走る32キロほどの路線ですが、その中でも『久留里〜上総亀山』間は、100円の収入を得るための事業経費が1万9110円もかかるという、まったく採算が合わない区間なのです」(前出・ジャーナリスト)
JR東日本では関東を除いた中部の内陸部や、東北では海沿いの地域で1日の乗客が500〜1000人しかいない路線がいくつもある。東北の内陸部に至っては、500人を切る路線がさらに数を増して点在しているという惨状だ。
もちろん、こうした赤字路線はJR東日本に限った話ではなく、例えばJR西日本が昨年4月に公表した赤字路線は年248億円だった。特にヒドいのが岡山県と広島県をまたいで走るJR芸備線の「備後落合〜東城」間で、こちらは100円を稼ぐのにかかる経費が久留里線を超える2万5416円という状況なのだ。
「こうした赤字路線はやがて廃止され、バスなどに替わることになるでしょう。そもそも今回の法律は、そうした流れを後押しする中身となっていますから」(前出・ジャーナリスト)
結果的に地域住民の利便性が損なわれる可能性も指摘されているが、実態はもはや待ったなしであるのもまた事実なのである。
(猫間滋)