新生・森保ジャパンの初陣、ウルグアイ戦が行われた。
この試合の見どころは、守ってカウンターだけではなく、ゲームを支配して相手の守備を崩せるかという攻撃力のレベルアップだった。
対戦相手のウルグアイは、主力選手の数人がケガや出場停止で来日できなかった。それでも南米予選で揉まれているだけに選手層は厚く、親善試合とはいえ勝ちを意識して戦った。
前半は試合巧者であるウルグアイの、のらりくらりのサッカーにハマって、ボールをキープしても足元ばかりへのパスで工夫がなく、相手の守備を崩せない。三笘薫が何度かドリブルで突破して見せ場を作ったが、この試合でシュートは1本も打てなかった。結局、前半はウルグアイが数少ないチャンスをモノにして0-1で折り返す。
後半に入ると16分にワントップの浅野拓磨に代えて上田綺世、右サイドの堂安律に代えて伊東純也を投入すると攻撃が活性化。後半29分に鎌田大地に代えて西村拓真を投入すると、後半30分に西村のゴールで同点に追いつき引き分けた。
前半は退屈な試合展開で攻撃にアイディアもない。後半に攻撃陣を入れ替えカウンターで勝負。カタールW杯で見せたサッカーと変わりはない。代表メンバーが全員そろってトレーニングができたのがわずか2日間だった。すぐに大きく変わるのは難しいし、これから少しずつ変えて行くのだろう。
そんな中、2人の新戦力が攻撃にアクセントを与えてくれた。
ひとりは右サイドバックの菅原由勢。前半22分、鎌田の横パスをダイレクトで前線の浅野に出したラストパス。ボールは絶妙にカーブがかかり浅野の足下に。シュートは決まらなかったが、最初の決定機を作った。
さらに後半30分、右サイド伊東のグランダーのクロスを西村が決めたゴールも、起点となったのは菅原だった。右サイドから伊東に出したスルーパスは完璧だった。パスが短ければ伊東はボールを一度コントロールし、相手選手が寄せてくる時間を与えてしまう。パスが長ければもっと深い位置からのクロスになってしまう。ところが菅原が出したスルーパスは伊東のスピードを落とすことなくダイレクトで中にクロスを出せる絶妙な距離だった。ボールを繋ぐことも大事だが、1本のパスでビッグチャンスを作り、相手に恐怖を与えることができる。
もう1人は同点ゴールを決めた西村。日本のトップ下といえば鎌田の定位置。鎌田の良さはボールが収まりパスも出せ、ボランチの位置まで下がってゲームを作ることもできる。しかし西村は全くタイプが違う。よりワントップの近くにポジションを取り、相手の最終ラインとボランチの間のスペースを見つけてシュートを狙う。まさにセカンドストライカーとしての役割だ。鎌田と違うタイプの選手をそろえることで攻撃に幅が出てくる。
森保ジャパンのスタートとしては決して悪い試合ではなかった。ただ、大事なことは新戦力の選手が結果を出して、カタールW杯メンバーのポジションを脅かすこと。それが選手層の厚さ、さらに4年後のベスト8に繋がるというものだ。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。