「日本は過去の軍国主義侵略者から、普遍的価値を共有し、安全保障と経済、グローバルアジェンダ(国際的な課題)で協力するパートナーに変わりました」
3月1日、韓国で行われた日本の植民地支配からの独立運動を記念する「三・一節」式典。その席上、尹錫悦大統領が日本に対し「パートナーになった」と発言したことに、韓国内外で賛否の声が広がっている。
「というのも、文在寅氏が大統領だった18年の『三・一節』式典演説では日本を『加害者』と表現し、『反人倫的人権犯罪』と断じ、日本側に反省を促していた。それが、今回の尹発言では真逆ですからね。しかも、演説では最大の懸案である徴用工問題や慰安婦問題についても具体的には触れられず、日本に対して謝罪や反省を要求しているような言及もなかった。徴用工問題の解決案の処理など、まだまだ問題は山積みで一筋縄ではいかないまでも、日韓関係が改善に向けて大きく前進していることは間違いないでしょう」(国際ジャーナリスト)
もちろん今回の演説の背景には、北朝鮮の核・ミサイル開発に対する脅威の高まりを受け、米韓日の連携を強化したい韓国の思惑があることは言うまでもないが、もう一つ指摘されるのが、韓国の国民が持つ反日感情の変化だという。
「たしかに文在寅氏が大統領の時代には、日本製品の不買運動が起き、反日志向が高まったことは事実です。ただ、今の韓国では『ノージャパン』なんてすでに遠い昔の話。日本製品はどこのコンビニやスーパーでも普通に買えるし、日本の映画やアニメ、音楽も大人気です。そんなこともあり、文政権によって“作られた”大衆感情もついに期限切れを迎えたと揶揄するメディアも多いですね」(同)
そして今、韓国で熱狂的な人気を集めているのが、日本でも大ヒット中の映画「THE FIRST SLAM DUNK」だ。韓国で1月4日に封切られるや、観客動員数トップを記録。その勢いは今も衰えを知らず、「破竹の勢い」「スラムダンク旋風」等々、現地メディアで連日のように報道されている。
「原作漫画が出版された90年代初頭は、まだ韓国で日本の大衆文化が規制されていた時期。そのため登場人物の名前などは、すべて韓国名に置き換えられ出版されていましたが、当時も大人気で書店では手に入らないことも多かったといいます。そんな経験をした若者たちが今、韓国経済の中心を担う30〜40代になり再び作品に触れたことで、爆発的な消費に繋がった。それが10〜20代の若い世代まで巻き込んでいます。つまり、スラムダンクをはじめとしたアニメや映画、音楽などの両国のエンタメが、結局は日韓関係改善の懸け橋になったといっても過言ではないでしょう。世論を動かすそうした背景が、今回の尹大統領の『パートナー』発言にも繋がったと考えていいかもしれませんね」(同)
思わぬところで脚光を浴びた「スラムダンク」だが、改めてエンターテインメントが持つ力を再認識させられた。
(灯倫太郎)