ついにオリックスが日本シリーズでヤクルトに勝った。親会社が阪急からオリックスに変わり、球団名もブレーブス、ブルーウェーブ、バファローズとなって、去年に続く4度目の対決でやっと下した。僕らの阪急ブレーブスは何度も日本一になったけど、合併した近鉄バファローズは1度も頂点に立てなかった。やっぱりバファローズの名前ではアカンのかと今年も3戦目を2敗1分けで終わった時点で頭をよぎった。本当によく巻き返してくれた。
MVPはラオウこと杉本が獲得したが、リリーフ陣の踏ん張りこそ最大の勝因やった。ターニングポイントとなったのは4戦目の1-0の完封。5回1死三塁の大ピンチを宇田川で切り抜けてイニングをまたぐと、7回からは山﨑颯が2回を無失点に抑えた。宇田川はこの試合だけでなく、計4試合を無失点。MAX159キロのストレートと落差の大きいフォークを武器に力でねじ伏せた。7月に育成から支配下登録されたばかりの23歳こそ、陰のMVPやった。
この日本シリーズが始まる前は、オリックスファン以外は宇田川のことを知らなかったと思う。試合内容が面白く、両球団以外のファンも中継に釘づけとなり、宇田川という珍しい名前も一気に知れ渡った。これこそシンデレラストーリー。レギュラーシーズンでも優勝争いの佳境で19試合に投げ、2勝3ホールド、防御率0.81。26年ぶりの日本一の立役者として、年俸450万円からどこまで上がるか楽しみや。
毎試合、ハラハラドキドキの日本シリーズ。痛感させられたのは、やっぱり「野球は守り」ということ。ヤクルトの3冠王・村上宗隆も、オリックスの主砲・吉田正尚も、いい投手にかかると簡単には打たせてもらえない。オリックスはエースの山本由伸が計算違いの離脱となったけど、ブルペンを含めた投手力と守備力でヤクルトを上回った。
ヤクルトの敗因も結局はまずい守備やった。クローザーのマクガフのエラーで2試合を落とし、第7戦目も5回2死満塁でセンターの塩見が左中間の打球に追いつきながら捕れずに走者一掃となった。最終的には1点差まで追い上げただけに、あの3点がなければ、どうなっていたかわからない。厳しい言い方をすると、絶対に落としてはいけない場面で、もっと慎重に捕らないといけなかった。本人は一生懸命やっているのは間違いないが、だいたいの目安で捕りに行くような軽率なプレーに見えてしまった。塩見はこの悔しさを忘れず、グラブの芯で捕るという基本をもう一度練習から徹底したほうがいい。
今季限りで勇退する宮内オーナーにとっては、最高のはなむけとなった。前回の日本一がイチローを擁した96年。そこから長い低迷期間に入り、多くのファンが離れてしまった。昨年はコロナ禍で観客制限がある日本シリーズ開催だったので、本拠地の京セラドームにこれだけのファンが集まったのを久々に見た。子供や女性のファンも確実に増えているし、今度こそ人気を根づかせてほしい。シリーズ後には、吉田正尚がポスティングシステムによるMLB挑戦を球団に直訴した。由伸もメジャー願望があるし、いつまでチームに残るかわからない。2人が抜けても大丈夫なチームを作らないといけない。今は96年より若くてイキのいい選手が多い。今度こそ、黄金時代を迎えてほしい。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。