「核攻撃すれば生存不可能!」米国による突然の「北朝鮮」恫喝の理由とは?

 核兵器を使用した後に金正恩政権が生存できるシナリオはない――。

 米国防総省が10月27日、2022年「核態勢見直し(NPR)」報告書を公表。そのなかに「米国や同盟国に対する北朝鮮によるいかなる核攻撃も容認できず、その政権の終焉をもたらすだろう」という強い文言が含まれていたことで、日本や韓国をはじめ同盟国関係者の間に波紋が広がっているという。

「この日行われたブリーフィングでオースティン国防長官は、中国を『国際秩序を再編する意図と力の両方を有する(米国の)唯一の競争者』と位置づけ、ロシアを『米国の利益、価値に対する即時的かつ鋭い脅威』と規定。さらに国防総省は、北朝鮮をイランや国際テロ団体などと共に『現存する脅威』に分類した、と発表しました。これは、7回目の核実験などで挑発する北朝鮮に対する警告ですが、同時に11月8日に中間選挙を控え、強いアメリカをアピールするものでもあります。とはいえ、これまで北朝鮮の動きを半ば黙過していた米国が『生存できるシナリオはない』という強い文言を使うのは異例として驚きの声が上がっています」(国際部記者)

 北朝鮮は、今年9月25日から10月9日にかけ合計7度、核搭載可能とみられる弾道ミサイルを発射。そのうち1発は日本上空を通過し、米軍が軍事基地を置くグアムを射程にした4500キロを飛行後に太平洋上に落下。さらに、10月10日に行われた「朝鮮労働党創立77年」式典では、金総書記自ら朝鮮人民軍の「戦術核運用部隊」の指導を行ったことが国営メディアで大々的に報じられるなど、変わらぬ挑発行為が続いていた。

「2017年にトランプ前米大統領が金総書記を『ロケットマン』と揶揄したように、バイデン政権にも『ナルシストな独裁者に何ができる』と思いが根底にはあったと思います。ところが北朝鮮は9月、新たに独自の核兵器使用条件などを定めた法令を可決。この法令は『戦争で優位に立つ』『不可避的に強制された』場合には最終兵器に頼ることができる、という曖昧で自由度の高い理屈になっているため、さまざまなケースで核攻撃を正当化する可能性があるのです。例えば米国との合同軍事演習など、韓国に敵対的行動があったと判断すれば、先制核攻撃する口実にもなるということです」(同)

 この法令可決の背景には、ロシアによるウクライナへの侵攻があることは間違いないが、

「北朝鮮の核外交は一貫していて、挑発→段階的なエスカレーション→挑発後の平和策略→その過程で他国から膨大な支援金や物資を得る、という流れがありました。しかも、交渉で得た金を核爆弾やICBMなどの戦略兵器製造の資金に充て、そのサイクルを繰り返しながらここに至っている。でも今は、“オオカミ少年”が本気になれば、途轍もない恐怖が訪れるかもしれない状況になったと言えます」(同)

 今回の米国防総省の発表には、そのけん制の意図もあるのだろう。しかし北朝鮮は28日午前、江原道通川一帯から日本海に向け、短距離弾道ミサイル2発を発射。強気の姿勢を崩していない。

(灯倫太郎)

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