ヨネスケ「晩ごはんの突撃は女性を口説くのと一緒だ」/ガタガタ言わせろ!(2)

 おっと、落語家とタレントという人を楽しませることを生業としているのに、湿った話ばかりしてちゃいけねえ。地上波とBS放送で30年以上続いた「突撃! 隣の晩ごはん」についても話をしておかないと。

 岸部シローさんが司会をしていた「ルックルックこんにちは」(日本テレビ系)のワンコーナーだったけど、コーナー名を目にするだけで懐かしく感じる人も多いんじゃないかな。実はあのコーナーへの出演が決まったのは、オーディションだったんですよ。当時の俺はテレビ局からのオファーはほぼゼロの下っ端でしたから。放送が始まった1985年、俺がそれまで出演できていたのは「日曜ビッグスペシャル」(テレビ東京・日曜夜8時台)の2時間枠内の「いじわる大挑戦」ぐらいだった。

「いじわる大挑戦」の番組のプロデューサーは、数々のヒット番組を手がけたテリー伊藤さん。その頃は本名の伊藤輝夫さん名義で大活躍していたけど、駆け出しでチャレンジ精神に燃えていたらしい。「撮影スタジオ代が高いから、ロケ撮影で」という制約の中で作っていて、俺も出演させてもらうことになった。

 テリーさん自身もプロデューサー人生を賭けていたから、演出がハードだったね。おしりに筆を挿して、学生時代の恩師の前で「寿」と書けとか(笑)。剣山に花を挿して、剥き出しのおしりに乗せ、俺が当時住んでいた西船橋(千葉県)をリヤカーで引きずり回されたりとか。おしりの話ばかりになって恐縮だけど、演出側も演者側も視聴率を上げようと頑張っていたんだよね。同じ時間帯に、大河ドラマや野球のナイターが放送されていたから、負けたくなくて。俺は、今の若手がやっているような、カラダを張った芸もいとわなかった。

 さて、「突撃!隣の晩ごはん」に話を戻すと、あれ、ヤラセじゃないですからね。全てアポなしでレポを続けているうちに、「この家はいける」っていう、俺なりのOKかNGかの見極め方を体得したんですよ。全て本当に突撃してきたからわかることなんだけど。

 大きなしゃもじを見せたら、「『隣の晩ごはん』ってことは、ヨネスケさんですよね?」なんて驚いてくれるご家庭はだいたい受け入れてくれた。ちなみに一度だけ、田園調布で突撃した時に、どの家からも断られ全滅した回があるんだけど、それは記憶からほぼ消している(笑)。見極めが難しいのは「無理です」と言いながら、もう少し押せばOKが出そうなご家庭。俺は女性を口説くシチュエーションにたとえるんだけど、笑いつつ鼻から抜けるような声で拒否する家はOKだったかもしれない(笑)。

 今の20代男性は、口説くのが苦手な世代と言われているでしょう。コロナ禍が収まったらYouTubeで突撃するつもりだから、口説き方の見本としても見てほしいなぁ。もちろん俺と同性代も。まだ萎えていい年齢じゃないですよ!

ヨネスケ 落語家・タレント。1948年4月15日生まれ、千葉県出身。1967年、4代目桂米丸に入門し、1981年真打昇進。2020年、YouTubeチャンネル「突撃!ヨネスケちゃんねる【落語と晩ごはん】」を開設。

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