落語家以外の、俺の仕事についてもお話しさせてください。主演した映画、「突撃! 隣のUFO」が2月3日に封切りになります。
B級映画の巨匠と呼ばれる河崎実監督にオファーをいただいた時、俺は何度も断ったんだよね。以前、役所広司さんや山﨑賢人くんとか、錚々たる役者が出演したドラマ「陸王」に1話だけ出演したことがあるんだけど、ほんの一言のセリフでテイク9まで撮り直しをして、芝居は向いていないと自覚していたから。
相手役にも申し訳なくて。例えば相手が、何行にもわたる長セリフを言い切ったとする。その後、俺がミスをすると最初から撮り直しになってしまう。落語ならトチっても一人語りだからごまかせるけれど、相手がいる芝居はそううまくは運べない。しかもドラマや映画は、同じシーンを違う角度から何度も撮り直す。何度もテンションを上げなければいけないから、老体にはこたえるんです(笑)。
だからずっと、「俺はセリフが覚えられないから無理です」とお断りしていたのですが、河崎監督に「セリフを少なく短くしますから。撮影中にカンペも出しますから」と口説かれて。スクリーンに登場してもしばらく何もしゃべらない、滝役を演じたわけです。
ストーリーは、『突撃! 隣の晩ごはん』がイメージしやすいかと。コロナ禍で一般家庭にお邪魔しづらくなった俺演じる滝が、ついに金のしゃもじを持って、UFOにまで突撃していくというお話。
滝は過去に妻子をUFOに誘拐された悲しい出来事を経験した男ですが、一番頑張ってくれたのは、滝の部下を演じた岡本役の濱田(龍臣)くん。撮影で1週間ホテルへ缶詰めになった時は、俺も酒すら飲まずに必死に台本を覚えたけれど、彼の演技力には脱帽した。
主演で出ずっぱりなのにセリフが少ない俺の芝居を観て、「くだらねえことをしているな」と、劇場で腹を抱えて笑ってください。
ヨネスケ 落語家・タレント。1948年4月15日生まれ、千葉県出身。1967年、4代目桂米丸に入門し、1981年真打昇進。2020年、YouTubeチャンネル「突撃!ヨネスケちゃんねる【落語と晩ごはん】」を開設。