ヨネスケ「謝罪するなら頭を下げて相手につむじを見せろ」/ガタガタ言わせろ!

 ヨネスケこと、桂米助です。今週はタレントとしての俺の代表作として知られている、「突撃!隣の晩ごはん」(日本テレビ系)の裏話についてお話しさせていただきましょう。アポなし訪問は事実ですが、闇雲に突撃していたわけではないんですよ。初対面のお宅に入れていただくには、コツがあるんです。

<町の人へ事前に調査する>

 当時は取材する町に到着したら、魚屋さんや八百屋さん、米屋さんなんかの人に聞いていたんだよ。「この辺りで陽気でよくしゃべるお母さんに心当たりはありますか? 何人家族ですか?」って。自宅を教えてもらったら、本人には知らせずに突撃していた。

 見つからない時は住宅街をうろうろして、洗濯物をチェックすることもあったなあ。股引が干してあれば、「年配の人が住んでいるだろうから、OKかもしれない」なんて予想することもあった。今だったらコンプライアンス的に、絶対非難される事前調査をしていたんだよね。

<お宅に入れてもらえて仏壇を見つけたら、必ず拝む>

 テレビに映らなくてもいいから、仏壇を見たら絶対に手を合わせていた。「ご先祖様、ご自宅に入れてくださってありがとうございます」という気持ちを込めて。これはご自宅に入れてもらうテクニックではなく、感謝を伝えるため。思いが伝わるのかもしれない。かなり高い確率で喜んで招いていただけました。ちなみに、ご自宅に上がらせていただいたら、ADさんが全員の靴をそろえるのもマナーとして徹底していました。

<ご自宅も料理に対しても、決してネガティブな発言をしない>

 どことは言えないけれど、ゴミ屋敷のようなお宅や、冷蔵庫を開けてみたら、めちゃくちゃに散らかっていたご家庭もあったなあ。だけど、招き入れてくれただけで感謝しないと。というわけで、俺は絶対にけなしたりしなかった。

 例えば、本来は子供部屋に保管しなければいけないランドセルがリビングに放置してあったとする。俺はこう伝えていた。「のびのび育てていて、いいね。将来、素敵な大人になるよ」と。洗濯物もソファの上に放ったらかしだったけど。

 冷蔵庫の中が見るも無残なほど散らかっていたら、こう評していました。「仕事しながら家族全員の料理も作って、偉いよね。時間がないだろうし、それだけ忙しいのに家族の健康を考えるってすごいですよ!」って。「汚い」なんてワードを一言でも発したら一発退場だから、褒めちぎっていた。

 料理ももちろん、否定はしない。たまに美味しくないのにも遭遇したけど(笑)、少しずつ言い方のレパートリーを増やしていったんです。「これはなかなかですね」とか、「独特の味と香りがしますね」「普通の味じゃないですよ」とか。

<一口でも料理をいただいたら、完食が鉄則!>

 食レポの基本なんだけど、意外と大変なんですよ。1日で3軒ぐらい訪問しなくちゃいけないから。カレーとか炭水化物ガッツリのメニューは、1皿いただいたら満腹になってしまって、次のロケに行けない。

 ロケを重ねるたびに学んでいった俺は、マイ箸とマイスプーンを持参するようになった。カレーはごはんをいただかず、小皿に一口分だけ盛ってもらったりしていた。肉じゃがなら1つぐらい俺が食べてもいいかなと、いただいていた。料理を作る時は、家族の人数分の量を考えるでしょう。俺が多めに食べたら、家族分が足りないかもしれないという配慮もあった。ご自宅に入れてもらえるまでは図々しく見えていたかもしれないけど(笑)、入れていただいたらけっこう繊細な対応をしていたんです。

 突撃できたら、ギャグを言うのも、俺の定番。「お母さん、キレイですね。若尾文子さんの後ろ姿にそっくりです」なんて言うと、相手はイヤな気持ちにはならない。「あら、本当?」なんて話が盛り上がっちゃったりもする。マスクをしていたお父さんが玄関で出迎えてくれた時は、「銀行強盗かと思ったよ!」なんて、あけすけな発言をして笑われたりした。

<それでもご家族の怒りを買ってしまったら‥‥>

 俺を含め、スタッフ全員で土下座! 怒りの火種はどこにあるかわからないけれど、とにかく土下座! 俺たちは頭のつむじが見えるように下げて、謝罪していた。「本当にすみません。二度と突撃しません」と。先方の親父さんやお母さんに激怒されたのも、今やいい思い出だなあ(笑)。きちんと謝罪をしていたから、テレビ局に一度も苦情の電話がかかってきたとは聞いていない。靴も脱がず、玄関先で土下座したこともあった。

 これは俺がガタガタ言わせてほしいんだけど、今の若者は謝り方が下手な気がする。全員とは言わないけれど、顎を上げたまま、「どうもすみません」って謝罪するからね。本気で謝るなら、つむじを見せて頭を下げないと、と思うよ。

 自分がさんざん突撃してきたから、後輩が突然、自宅を訪ねてきても断れないのは当たり前。俺は今、離婚して一人暮らしなんだけど、できるだけ自炊をするようにしていて、夕食時間が早いんですよ。毎日、17時ぐらいかな。

 ある日、食べ終えたら、芸人、ナイツの塙(宣之)にアポなしで突撃されて。その日は買ってきたアルゼンチン海老をむいて食べて完食。味噌汁に入れた海老の頭しか残っていなかった。その様子が撮影されて、塙のYouTubeに載ったんだけど、恥ずかしかったなあ。初めて突撃される側の気持ちがわかった。

 そういえば、落語家の林家つる子にも突撃されたことがあった。その日は食事前だったけど。いつか俺も2人に、ガタガタ言わせず突撃してやる!

ヨネスケ 落語家・タレント。1948年4月15日生まれ、千葉県出身。1967年、4代目桂米丸に入門し、1981年真打昇進。2020年、YouTubeチャンネル「突撃!ヨネスケちゃんねる【落語と晩ごはん】」を開設。

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