お笑いコンビ、星セント・ルイスが「田園調布に家が建つ」のギャグで一世を風靡したように、日本を代表する高級住宅街として知られる大田区・田園調布。ところが、ここ10年ほどで空き家が増え、夜でも窓の明かりがなく真っ暗なままの家が目立つようになった。“田園調布がゴーストタウン化”とセンセーショナルに報じたメディアもある。
この街には高級住宅街としての景観を保全するための建築協定「田園調布憲章」が存在するが、「これが大きな足かせになっている」と指摘するのは住宅専門誌の編集者。
「敷地は165平方メートル以上なければならず、都内の戸建て住宅の平均のほぼ倍。建物は2階建てまでしか認められず、自分の土地でも樹木を好き勝手に伐採するのはNG。さらに建物の外観や塀にも細かい決まり事が設けられています。建築基準法などと比べて縛りが大きく、富裕な戸建て購入希望者からも敬遠される理由になっています。個人だけでなく不動産業者にとっても買い手が見つけにくく、いまや魅力的な土地とはいえないのです」
一方では、以前から暮らしている住民の高齢化問題もある。持ち主が亡くなった場合、残された人が相続することになるが、ここでも“憲章”の制約を受けてしまうのだ。
「大邸宅を買える人など限られていますし、かといって敷地面積の問題から、土地を分割して売ったり、もちろんマンション建設もできません。町のグレードを守るために町会で守ってきた憲章ですが、家のオーナーの代替わりの時期にきて、これが妨げになっているケースがあることも否めません」(同)
ただ、一般の人から見ると敷居の高い田園調布は、その環境御良さから著名人には今も人気があり、17年には浜崎あゆみが10億円の大豪邸を購入したことを写真週刊誌「FLASH」がスクープ。ちなみにその隣には14年までエイベックスの松浦勝人会長が住んでおり、現在は転居したが近所にはMr.Childrenの桜井和寿の自宅もあったと報じられている。
今後は、アメリカのビバリーヒルズのように、田園調布はエンターテインメント業界のスターたちが住む街として再生を目指す方法もあるのかもしれない。