現在、食肉価格の世界的な高騰で焼肉業界が危機に瀕している。その大きな原因となっているのがウクライナ戦争。ロシアと合わせて両国は世界有数の穀倉地帯だが、長引く戦争の影響で飼料用穀物の安定供給に支障が生じたためだ。
なかでも特に厳しいのが食べ放題焼肉店。高級店ではないので和牛はコストに見合わず、使用するのは米国やオーストラリア産などの輸入牛肉。ところが、中国ほか一部の国の業者が買い占めに走るなどして、確保が困難に。その結果、牛肉メニューが大幅に減り、代わりに豚肉や鶏肉メニューが増えるという異例の事態も起こっている。
「仕入れルートを確保している焼肉キングなどの大手チェーンはまだ影響が少ないですが、中小のチェーンや個人経営の店舗はそうはいきません。先日、帰省した際に某地方の食べ放題店を何軒か回りましたが、ひどいところは臓物系も含めて牛肉メニューがわずか5品。ロースや牛タンすらありませんでした。早々に品切れになっている店もありましたね」(フードライター)
焼肉店の場合、お客の多くは牛肉が目当て。提供する部位が少なければ、お店としての魅力が半減して、客足が遠のいてしまうことは容易に想像がつく。
「しかも、豚肉と鶏肉も高騰しており、利益率は確実に下がっています。すでに料金の値上げに踏み切った店舗も多いですが、食べ放題だと安いお店でも大人1人3000円前後。そこまで高いお金を払って牛肉が満足に食べられなければ、お客が別の飲食店に流れるのもやむを得ないでしょう」(同)
コロナ禍で外食産業が軒並み苦戦する中、焼肉業界は好調を維持していたが、これもすでに過去のこと。東京商工リサーチによると、21年度における焼肉店の倒産は18件で前年度比50%増。もはや「勝ち組」などと言ってられない状況なのだ。