ルーブルが急回復!西側に広がる「ゼレンスキー疲れ」はプーチンの目論見通りか

 2月下旬に始まったロシアに対する経済制裁が、ついに1万件を突破したという。

 しかし6月17日、ロシア西部で開かれた国際経済フォーラムに出席したプーチン大統領は、「ロシア経済を崩壊させる欧米の試みは成功しなかった」と、相変わらず強気の姿勢を崩さない。

「制裁開始から約4カ月が経過しましたが、2月下旬には国際的な決済ネットワーク『国際銀行間通信協会(SWIFT)』からロシアの銀行を排除する制裁を発動。これにより、ロシア人および企業による他国との取引が厳しく制限されました。ところが、ビットコインなどの仮想通貨を使えば問題なく取引が出来るため、首脳7カ国(G7)では仮想通貨も制裁対象にしたものの、いかんせん7カ国だけではロシアマネーの封じ込めは無理だった。結局、グローバル化した世界の中における“抜け穴”が、ロシアに致命的なダメージを与えられない大きな要因になっているのです」(ロシア情勢に詳しいジャーナリスト)

 さらに、金融と並んで西側が力を注いできたのが、石油や天然ガスといったロシアが主力とする輸出品を購入しないという制裁だが、

「むろん、狙いは貿易分野を止めることでロシアの収入を減らし、戦費を枯渇させることだったのですが、当初はロシア産資源への依存度が高い欧州などは禁輸に慎重だった。しかし5月のG7首脳会議で禁輸またはフェーズアウト(段階的廃止)で合意し、EUも5月30日、禁輸に合意。ところが、これだけ制裁をかけているにもかかわらず、外国為替市場ではロシアの通貨ルーブルが大幅上昇しているのです。これは、輸出企業に対し取得した外貨の80%をルーブルに強制転換させたり、天然ガスを輸入する国に対して代金をルーブルで支払わせるなどの『通貨防衛策』が功を奏したことが大きい。結果、『SWIFT排除』で一時は暴落したルーブルも、現在は対ドルレートで侵攻前の水準に回復。それがロシアの戦費を枯渇させない最大の理由になっています」(同)

 西側の経済政策に対し、さまざなま“抜け穴”を巧みに利用しながら生き残りをかけるロシア。一方、西側諸国は「プーチンフレーション」により記録的な物価上昇が起こり、各国から悲鳴が上がっている。

「とくに、現在のNY原油先物は1バレル=110ドルを超えています。西側が制裁を続ければ続けるほどエネルギー価格は上昇しますから、皮肉にも結果的にこれが資源大国であるロシアの財政を支えることになってしまうんです。つまり、斬りつければ斬りつけるほど、返り血の量も増えるということです」(同)

 そんな状況もあり、ウクライナを支援し続ける欧米では昨今、「ゼレンスキー疲れ」という言葉が飛び交うようになっている。

「このままいけば、この戦争が年内いっぱいは続くだろうことは想像に難くない。冬になれば当然、暖を取るための燃料が今よりも多く必要になり、エネルギー資源価格が高騰する可能性は大きい。今後のウクライナ情勢を占ううえでは、ロシアに制裁を加える以前に、西側諸国がこの記録的な物価高に耐えられるかどうかが大きな問題になってくるということです」(同)

 歯ぎしりする西側の首脳を横目に、プーチンの高笑いが聞こえるようだ。

(灯倫太郎)

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